「病棟保育士になりたいけれど、実は病棟保育士のことをあまり知らないかも……病棟保育士のことがもっと知りたい!」
 

そんな方もいると思います。
 

病院で医師や看護師と共に働く保育士…という漠然としたイメージを持っている人も多いかもしれません。
 

もちろん間違ってはいないですが、

できれば具体的にどんな仕事をしているのか知っておきたいところです。
 

みなさんが病棟保育士のことを調べているのも、普通の保育園に勤めている保育士との違いや特殊性に興味をもったからではないでしょうか?
 

今回は病棟保育士になりたい人が知っておくべき病棟保育士についての基礎知識から、具体的な仕事内容・病棟保育士の求人についてまで幅広くお話していきます。
 

1.病棟保育士とは何なのか?その歴史は意外と浅い?

 

歴史の勉強は暗記が多くて厄介ですよね。
 

保育士試験に挑戦したことのある方は、学習の中で保育園の歴史や保育士の歴史に初めて触れ、覚えることが意外と多いと感じた方もいると思います。
 

私も試験勉強の際に、日本で最初の保育園が1890年新潟県で作られた静修女学院附設託児所であると知り、120年以上前から続く歴史の上に自分もいるのだと感慨深く思ったものです。

①医療保育士と病棟保育士の違い

 

病院で働く保育士は全員病棟保育士だと考えている方も多いと思いますが、実は私自身も別の種類の保育士と間違われることがあります。
 

今私が働いている保育園は、総合病院の敷地内に建てられた「院内保育園」なのですが、周りには「病気の子どもが対象の保育園なの?」と勘違いされることも少なくありません。
 

院内保育園は病院で働く医療スタッフや技師などの子どもを預かる保育園で、病気の子どもを対象とするのは病児保育室になります。
 

病児保育室で働く保育士は医療保育士といいますが、

この見分けがつかない方が意外と多く、私も間違っていたことがあります。
 

総合病院内には障害児施設の保育士も配備されていて、そこに勤めている保育士は病棟保育士だと長年思っていたのです。
 

たまたま勤めていた方とお話する機会があり、「私は医療保育士ですよ」と訂正されとても驚いたものでした。
 

病院で働く保育士の位置付けは、病棟保育士を目指しているなら一度きちんと把握しておきたいところですね。

・医療保育士とは

 

医療保育士とはどのような保育士なのでしょうか?
 

日本医療保育学会の定義によると、
 

日本医療保育学会では,医療保育を以下のように定義している。
 

医療を要する子どもとその家族を対象として、子どもを医療の主体として捉え、専門的 な保育支援を通して、本人と家族のQOLの向上を目指すことを目的とする。
 

ここで保育支援とは、医療を要する子どもと家族に対して行われる保育士による保育(養護と教育)と支援のすべてを指す。
 

また、医療を要する子どもが保育を受ける医療保育の場として、病院・診療所、病児保育室、障害児施設を念頭に置いている。
 

病院・診療所の保育は、子どもの置かれている状況の違いなどから、病棟と外来に区分できる。
 

つまり,医療保育の場を、病棟、外来、病児保育室、障害児施設の4つに区分する。
 

 

となっており、医療保育士とは「医療を要する子どもの為に医療保育の場で保育支援を行っている保育士全般」に対して使われている用語ということがわかります。

・病棟保育士とは

 

上に挙げたような医療保育士の中でも、特に病院の病棟で保育支援を任される保育士を病棟保育士と呼びます。
 

大体1病棟につき1人の配置になっている病院が多く、病棟によって疾患の種類が異なるために保育支援の内容も多岐に渡っていることがほとんどです。
 

これから医療保育士になりたいと考えている方は、

これらの違いや定義をしっかりと押さえておくといいかもしれません。

②病棟保育士を確保するための資金を国から認められたのは2002年!

 

病棟保育の必要性を国が把握して動き出したのは割と最近のことです。
 

病棟保育士の歴史的な流れを表にまとめてみました。
 

病棟保育士加算導入までの経緯
1993年ごろ 日本医療保育学会の前身である全国病棟保母研究会が発足
1998年 活発な学術活動の動きを受けて「病棟保母導入促進事業」が国の政策に取り込まれるが、市町村補助事業だったため、地方財政困窮のなか予算が取れず実効性の無いままで終わる
2000年 厚生労働省によるすこやか親子21において病棟保育士の必要性が指摘される
2002年 医療保険制度の診療報酬に病棟保育士加算が導入される

 

1993年以前からも病棟保育士は存在していましたが、保育士の導入に伴う経費が医療機関の持ち出しだったために、ほとんどが総合病院や大学病院での導入に留まり圧倒的に数が少なかったのが実際のところです。
 

2002年に病棟保育士加算が認められたことによってある程度採算が取れるようになり、ようやく病棟保育士を導入する病院も増えていったという経緯があります。
 

このような流れを振り返ると、病棟保育士の歴史はまだまだ始まったばかりとも言えますね。

2.病棟保育士の仕事内容

 

病棟保育士は病院の中で医療保育に基づいた保育援助を提供していることがわかったと思いますが、やはり気になるのはその具体的な内容ですよね。
 

大体1病棟につき1人という少なさからその業務も病院によって様々です。
 

もちろん患者さんの病気の種類によっても関わり方が異なってくるので、これといった型にはまった仕事ではありません。
 

ほんの一例になりますが、病棟保育士の仕事内容について次にみていきます。

①夜勤は無い?病棟保育士の一日

 

病棟保育士の一日の流れは次のとおりです。
 

時間 仕事内容
8:00 その日使う道具の準備
8:30 ○病棟プレイルームの環境を整備する(掃除、整頓、玩具の消毒など)
○申し送り(夜間の様子や緊急入院した患者の把握、病棟スタッフの予定を把握、保育の予定や行事を看護師に伝え協力を依頼しておく、院内情報の収集)
9:00 ○電子カルテを眺めて子どもの病気の様子や予定を確認する
○子どもの担当看護師と情報を交換する(お互いに看護計画、保育計画、子どもと保護者の様子などを確認し合う)
9:30 ○子どもと保護者に声をかけコミュニケーションを取り、保育予定を伝達する
○実際に子どもや保護者と話したうえで保育計画を再度見直し検討し、その日の保育支援を決定する
10:00 おやつや離乳食の介助
10:30 集団保育や個別保育、排泄や手洗いの介助
12:00 ○昼食の準備と介助、離乳食の介助、歯みがきの援助
○子どもがお昼寝の間に保育記録、保育計画の立案、保育計画の評価など事務作業をする
13:00 休憩
14:00 個別保育や集団保育、排泄や手洗いの介助
15:00 ○おやつや離乳食の介助
○保護者とのコミュニケーションを取る(保育に必要な情報を得る)
○その日使用した道具を片づける
16:00 ○各病棟の保育士同士で情報を交換し合う
○必要に応じて看護師や医師に保育中の様子などを伝える
○保育記録、保育計画の立案、保育計画の評価など事務作業の続き
○保育活動や行事に向けての準備(壁面の飾りやパネルシアターの制作、行事に向けた準備など)
17:15 勤務終了

 

夜勤は看護師が行うので、保育士が夜勤に入ることはありません。
 

保育士1人でこれだけの業務をこなしていることに驚いた方も多いのではないでしょうか?
 

各病棟に1人が基本となると、特に集団保育を行うときには看護師さんの力を借りることが不可欠になりますが、そのためには日頃から看護師さんと厚い信頼関係を結んでおかなければなりません。
 

就職後最初に苦労すると言われる「申し送り」の内容を理解することも大切です。
 

医学用語を覚えて理解していないと、何を言っているのかわからないというようなことになりますし、治療には関わらないとはいえ、子どもの疾患についての知識がないと的確に支援することが難しくなってしまいます。
 

②専門性の高さに注目!経験を積んで「医療保育専門士」を目指そう

 

今現場で働いている病棟保育士はいつどこで医学知識を学んだのだろうと疑問に思いますよね。
 

実は医療保育について学べる学校は非常に少ないために、大多数の病棟保育士は医療保育についてほとんど学べないまま就職しているのが現状です。
 

入職後にしっかりとした研修システムを構築している病院もあるようですが、病棟保育士加算が導入された2002年からまだ日も浅く、病棟保育士養成のシステム化はまだまだ発達段階と言っていいかもしれません。
 

そのような背景を受け、2007年に日本医療保育学会は医療保育専門士という資格を取得できる制度を作りました。
 

応募資格は以下の3点です。
 

  • 日本国の保育士資格を有していること
  • 病院、診療所、病(後)児保育室、障害児支援施設および乳児院等で、常勤1年以上、非常勤は年間150日以上かつ2年以上の保育経験を有していること
  • 日本医療保育学会会員であり、1年以上の会員歴があること
  •  

    勤務経験が資格認定要件のひとつになっていますので、入職後にもっとスキルアップしたいと感じた方におすすめの資格です。
     

    全国では平成27年3月現在130人が認定されていますが、資格認定までは研修会が3回あり、レポートや論文・面接や口頭試問といった資格取得までの流れが非常に充実した内容になっています。
     

    病棟保育士になってからも職場以外で専門的な知識を学べる場があるのはとても心強いですね。
     

    3.病棟保育士は狭き門!なるにはどうしたらいいの?

     

    1病棟につき大体1人の配置と聞くと、病棟保育士の数の少なさが見て取れると思いますが、病棟保育士はなかなか入れ替わることがありません。
     

    入職後に1から知識や経験を積み上げていくとなると、病院側としてもせっかく時間をかけて育てた人材をなかなか手放したくないという気持ちになるのは想像がつきます。
     

    いくら病棟保育士になりたいと思っても、

    実際に目で見ての様子がわからないと自分に向いているのかどうかの判断ができませんよね。
     

    いろいろと課題が多そうですが、実際に病棟保育士になるためにはどうしたら良いのでしょうか?

    ①病棟保育士の求人は少ない!医療保育士としての経験を積んでおこう

     

    数少ない病棟保育士の求人の中から採用を射止めるには、求人情報に敏感であるのはもちろん、第一に病院側に求められるような人材にならなければなりません。
     

    もしみなさんが病院の採用担当者だとしたら、どのような人を採用しますか?
     

    やはりそれなりに医療保育現場での経験がある人を優先的に採用したいと考えますよね。
     

    病棟保育士の求人が見つかるまでの間、医療保育士として働いて経験を積んでおくことが結果的に病棟保育士採用への道に結びついていると言っても過言ではないのです。
     

    医療保育士として働くことで次の3つのことが身に付きます。
     

  • 医療に関する知識
  • 看護師と意見交換・情報共有ができる能力
  • 子どもの病状の変化に応じて可能な範囲での保育を考え実行する力

  •  

    どれも病棟保育士に採用された時に大変役立つことです。
     

    病棟保育士は狭き門ですが、医療保育士の求人であれば実は余裕があります。
     

    共働き世帯数の増加に伴って医療保育士の需要は近年高まってきており、特に病児保育室は年々増えているので医療保育士の求人は割と見つけやすくなっていますよ。
     

    ぜひ身の回りにある医療保育士の求人を探してみてください。

    ②病院にボランティアの募集がないか問い合わせてみよう

     

    自分の子どもが入院した際、病棟のプレイルームで遊ばせてもらったことがあります。
     

    プレイルームの壁面にはボランティアによる活動の様子が貼られて紹介されており、「こういうボランティアを募集しているのだな」と思ったものです。
     

    ボランティアの受け入れは病院によって異なりますが、気になる病院には自分からアクションをかけてみてはどうでしょうか?
     

    一例ではありますが、国立成育医療研究センターでは次のような種類のボランティアを受け付けているそうです。
     

  • イベント企画運営(音楽演奏やパフォーマンス)
  • 図書ボランティア(病棟の絵本、書籍の修理、絵本や紙芝居の読み聞かせなど)
  • 病棟ボランティア(遊びや見守りなどの支援活動)

  •  

    実は私自身も大学生のとき、吹奏楽団のホルン奏者として病院の中でボランティア演奏したことがあります。
     

    自分ができそうなボランティア活動に応募して、そこで病院の雰囲気を知ったり、実際に働く病棟保育士と交流したりすることで、病棟保育士になった際のイメージを掴んでおくといいかもしれません。
     

    熱心なボランティア活動が認められてそのまま病棟保育士求人の声がかかり、採用されることがないとも限りませんよ。

    病棟保育士は勉強の日々!先駆者となるくらいの情熱を持って飛び込もう

     

    今回は病棟保育士について様々な視点からみてきました。
     

    「ますます病棟保育士になりたくなった!」という方こそ病棟保育士に向いていると言えます。
     

    病棟保育士の歴史はまだ浅く、病院によっては就職してからも養成の為の研修システム等が追いついていない可能性があることを覚悟しておかなければなりません。
     

    そうでなくとも病棟保育士の世界は奥が深く、就職してからも勉強の日々が続きますし、具体的な到達点もないです。
     

    日々自己研鑽に励む日々が待っています。
     

    これから病棟保育士になる人はぜひ、病棟保育士という分野を切り開いていく先駆者のひとりになってくださいね。