待機児童が社会的な問題となっている背景を受けて、保育コンシェルジュという仕事にいま注目が集まっています。
 

「子どもを預けたいけれど、どんな保育サービスを利用したらいいの……?」といった相談に応じ、保護者の状況に合わせた情報を提供していくのが保育コンシェルジュの主な仕事です。
 

応募資格に保育士資格や保育所での実務経験が求められる自治体もあるため、保育士にとっては活躍の場が広がるチャンスになるのではないでしょうか。
 

導入後に待機児童ゼロを実現した自治体もあり国の関心も高く、今後も需要が増えていく仕事に間違いありません
 

今回はそんな保育コンシェルジュについて、
 

  • 仕事内容
  • 求められる役割
  • 求人の一例紹介
  • 保育士から転職する際のメリットとデメリット


 

をお話していきます。
 

1.保育コンシェルジュはどんな仕事か

 

保育コンシェルジュの仕事はひとことで言うと、保育サービスの利用者と提供者を適切に結び付けることです。
 

全国に先駆けて保育コンシェルジュを取り入れた横浜市のホームページでは、このように仕事内容を紹介しています。
 

(1)保育サービス等の利用に関する相談業務
区役所窓口や電話等で、保育を希望される保護者の方の相談に応じ、個別のニーズに合った保育サービス等の情報提供を行います。
(2)保育所に入所できなかった方へのアフターフォロー業務
保育所に申込みをされた結果入所できなかった(保留になられた)ご家庭には、保育・教育コンシェルジュからアフターフォローのご連絡をしています。お電話等でその時点での保育状況やご意向を確認しながら、代替保育施設等の情報をご案内します。
(3)保育サービス等の情報収集業務
各ご家庭のニーズに合った情報をタイムリーにご案内できるよう、区内および近隣区の保育サービス等に関するさまざまな情報を集めています。

 

私が特に注目したのはアフターフォロー業務です。
 

「保育園落ちた日本死ね」が流行語大賞に選ばれたのはまだ記憶に新しいですが、希望していた保育園に入れなかった時のショックは保護者にとって計り知れません
 

一方的に入所の可否だけが通知されると「じゃあ私はどうしたらいいの?」と途方に暮れてしまう人も多いと思いますし、1から保育サービスの情報を集める気力もなくなってしまいますよね。
 

今はインターネットで何でも簡単に情報が入ると思っていましたが、自分の状況に合った保育サービスのみを膨大な情報から拾い出すのは意外と困難で、私も自分の子どもを預ける際の情報収集には本当に苦労しました。
 

行政側から落選者に対して代替保育サービスの情報を提供してくれるのはまさに画期的な取り組みと言えます。

①近年の実績からみる効果は?保育コンシェルジュの役割

 

保育コンシェルジュは横浜市が全国に先立って取り入れた地方自治体によるサービスで、導入されたのは平成23年6月からですが、その前後の待機児童数の推移を見てみるとこのようになります。
 

H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27
待機児童数 1290 1552 971 179 0 20 8

 

平成21年から2年連続で全国最下位となる深刻な状況でしたが、保育コンシェルジュを取り入れてわずか2年で待機児童ゼロを実現しました。
 

同様に「子育て支援コンシェルジュ」を導入した千葉市でも待機児童がゼロになり、待機児童解消の鍵として一躍注目されるようになったのは割と最近のことです。
 

厚生労働省も待機児童が50人以上いる市区町村を中心に保育コンシェルジュの設置促進を図ることを明言しているので、これからますます活躍の場が広がると言っていいかもしれません。
 

私の周りでも実際に「子どもを預ける先について一緒に考えてくれる専門家がいれば心強いのにな……」という母親の声があったほどで、預け先について相談に乗ってもらいたいお母さんたちは意外といるということは押さえておいてくださいね。
 

女性の社会進出が推し進められるなか需要の高い仕事であることは間違いありませんし、悩めるお母さんたちをサポートするためにも保育コンシェルジュは必要不可欠な存在なのです。

②どんな相談をうけるの?具体的なやりとりについて

 

保育コンシェルジュは基本的に役所の窓口や電話で相談を受け付けています。
 

具体的な相談内容の例を挙げると、
 

  • 「週に数回、自分のペースで働きたいのだけど、子どもはどこに預けたらいいの?」
  • 「幼稚園の預かり保育の内容が良くわからない」
  • 「今現在の保育所の空き状況を詳しく教えて」
  • 「たまに子どもを預けてリフレッシュしたいけれど、預けるところはありますか?」

  •  

    など幅広い相談が寄せられていることがわかります。
     

    個別の状況に合わせて丁寧に相談に乗っていくため、利用者から感謝されることが多くやりがいのある仕事です。
     

    「ありがとう」の言葉をもらえると嬉しくて仕事に対するモチベーションが上がりますよね。
     

    一方で、認可保育園に入れなかった母親に「会社を辞めなきゃいけないじゃない!」と憤りの気持ちを直にぶつけられることも珍しくありません
     

    保育コンシェルジュを目指す方は、利用者の気持ちを真摯に受け止め、冷静に耳を傾けながら話を進めていく対人スキルを今のうちから磨いてみてはどうでしょうか?

    ③保育コンシェルジュの待遇は?求人の一例紹介

     

    現在保育コンシェルジュが設置されている自治体は全国174カ所(平成27年)で全体の約1割程度と、残念ながら求人が少ないのが現状ですが、前述したように今後導入する自治体が増える見込みなためみなさんの住む街でも設置される可能性は充分あります。
     

    チャンスがあるなら保育コンシェルジュに転職したいという人のために、実際の求人例を調査してみました。
     

    保育コンシェルジュの求人例
    雇用形態 地方公務員 非常勤嘱託員
    雇用期限 約1年の有期
    給与 月額163,400円~222,800円程度
    勤務時間 9:00~17:00
    休日 土、日、祝日
    待遇 通勤手当、健康保険、厚生年金、雇用保険など
    応募資格 ・保育に関心があり、子育て中の方を応援したいという意欲のある方
    ・パソコン(ワード、エクセル程度)の操作ができること
    ・保育士資格、幼稚園教諭の資格があること
    ・保育園、幼稚園、こども園、子育て支援センターでの勤務経験があること

     

    調べてみると各自治体によって給与や待遇・応募資格の面にかなり差がありました。
     

    例えば応募資格について、横浜市神奈川区では応募者の意欲面が重視され保育士資格は応募要件に入っていません。
     

    一方で東京都墨田区では「保育士の資格を有し、保育所で保育士としての勤務実績が10年以上あること」を要件に挙げているなど、各自治体の考え方によってバラつきが大きいのが実情です。
     

    自治体によって仕事内容が全く異なるというわけでもないので「統一しても良いのでは?」と思いますが、まだ歴史の浅い仕事なためどういう人材が最適なのか模索しているところなのかもしれませんね。
     

    保育コンシェルジュになりたい人は、まず自分の働きたい自治体のホームページで求人の有無や応募資格をチェックしてみることから始めてみてください。

    2.保育士から保育コンシェルジュになるメリットとデメリット

     

    保育コンシェルジュは自治体によって求人内容に幅がある一方、多くの自治体に共通する項目というのが実は存在しています。
     

    具体的には、
     

  • 地方公務員の嘱託職員であること
  • 雇用期限が設けられていること
  • 基本的なパソコン操作ができること
  • 土日祝日が休みであること

  •  

    この4点です。
     

    上記を参考に、保育士から保育コンシェルジュに転職すると働き方がどのように変わるのかについてメリットとデメリットの面で整理しながら次に見ていきます。

    ①保育コンシェルジュになるメリット!社会に役立つ実感が得られる

     

    保育コンシェルジュは前述したように相談業務や情報収集が主な仕事内容であり、求められるスキルには基本的なパソコン操作が含まれています。
     

    働く場所も保育園から役所の窓口になり働く環境も一変してしまいますが、だからこそ得られるメリットもあるので要チェックです。
     

    保育コンシェルジュとして働くうえで特に代表的な3つのメリットをまとめてみました。

    ・事務仕事なため体力的な負担が少ない

     

    保育園で働く保育士は子どもを抱っこしたり追いかけまわしたりするのが日常である一方、保育コンシェルジュになると椅子に座っていられるようになります。
     

    みなさんの周りに腰を痛めて日々の保育に支障が出ている人はいないでしょうか?
     

    腰痛は保育士の職業病とも言え、ぎっくり腰になってしまう人やヘルニアを患って保育士を続けられなくなった人が私の周りにもいます。
     

    毎日毎日積み重なってきた身体への負担が少なくなるのは保育士にとって本当に嬉しいことですよね。
     

    保育コンシェルジュは、体力的な面から「子どもの相手をするのがつらくなってきた」と感じている保育士の転職先にピッタリな仕事です。

    ・役所の窓口が働く場所なので、土日祝日が休み

     

    役所の窓口は営業時間がきっちり定められているため勤務時間は9時~16時または9時~17時のどちらかであり、残業が少なく土日祝日も休みになるなど保育園で働くより自由時間が増えます。
     

    「うちの保育園は残業が多くて……プライベートな時間が取れないから転職したい」という人にとってはまさにうってつけの職場です。
     

    しかしながら厚生労働省が「夜間や休日に時間外の相談業務を行う場合、窓口1カ所当たり年間約187万円補助金を上乗せする」との通達を出したことから、今後は勤務時間が不規則になる可能性もないとは言えません。
     

    こうなると「メリットが無くなってしまうのでは?」と心配になるかもしれませんが、公務員であるためそのぶんの手当や代休はしっかりもらえるとみて間違いありませんよ。
     

    保育コンシェルジュはワークライフバランスの面でみても保育士と比べて魅力的な仕事なのです。

    ・社会に役立つ実感が持てる

     

    世間からは待機児童の解消ばかりに目が向けられがちですが、保育コンシェルジュの仕事は他にもあります。
     

    保育に関する社会的な問題といえば、みなさんの頭にはなにが思い浮かぶでしょうか?
     

    私が真っ先に浮かぶのは児童虐待についての問題です。
     

    待機児童ほど身近に感じられる問題ではないと思った人もいるかもしれませんが、虐待を引き起こす原因となる育児ノイローゼは意外と身近に潜んでいます。
     

    実際に私の周りでも「ほんの少しで良いから子どもと離れて1人になる時間が欲しい……」と思い詰めた表情で打ち明ける母親も珍しくありません
     

    そういった気持ちを受け止め、一時預かりの保育サービスに結び付けるのも児童虐待を防ぐ大切な役割になりますよね。
     

    保育に関する社会的な問題に立ち向かい、社会に役立っていると日々感じられる保育コンシェルジュはとてもやりがいのある仕事です。

    ②保育コンシェルジュになるデメリット!子どもとの触れ合いはゼロに?

     

    保育士から働き方が大きく変わることで良いこともある一方で、残念ながら大きなデメリットもあります。
     

    自治体によって求人の内容にバラつきがあることもそうですが、共通する項目で見逃せないのは次の2つです。
     

    ・嘱託職員なので不安定な雇用

     

    「これさえなければ良い仕事と胸を張って紹介できるのに……」と思うくらい残念なのは、嘱託職員で有期雇用だということです。
     

    雇用期間を終えて更新されなかったら職を失うことになり非常に困ります。
     

    1年間せっかく頑張って情報を収集してきたのに、積み重ねてきた知識が無駄になってしまってはやりきれないですよね。
     

    更新されるかどうかを気にしながら仕事をするのはかなりのストレスになりますし、大きなデメリットと言っても過言ではありません。
     

    ・子どもとの触れ合いがほとんど無くなる

     

    保育コンシェルジュは基本的に保護者に対する相談業務なので子どもとの触れ合いはほぼないです。
     

    子どもが好きでそれまで保育士として働いてきた人は、この違いに1番戸惑うのではないでしょうか?
     

    保育士の経験が応募資格として挙げられるのに、絵本の読み聞かせや手遊びなど今まで保育士として積み上げてきたスキルが生かされにくい難点があります。
     

    こう言うと「保育士の経験は無駄になるの……?」と不安になった人もいるかもしれませんが、保護者の目線で考えると元保育士というだけで相談しやすくなるのは確かですし、保育士の経験は無駄にはなりませんから安心してくださいね。
     

    子育て中の主婦である私の立場で想像すると、窓口にいる人が元保育士だったら自分の子どものことを気兼ねなく話せて嬉しいと思います。
     

    子どもとの触れ合いが無くなるのは寂しいですが、保育コンシェルジュは保護者対応など保育士経験が充分に生かせる仕事です。

    まだまだ新しい保育コンシェルジュの今後に注目

     

    保育コンシェルジュは保育サービスの利用者と提供者を適切に結び付け、待機児童を解消する役割を果たしていることがわかりました。
     

    導入後に「待機児童ゼロ」を実現した実績もあることから国も高い関心を寄せており、今後は導入する自治体も増えていく見込みです。
     

    保護者の悩みを個別に聞き取り解決に導く保育コンシェルジュの仕事は、人の役に立つ喜びを感じられるのでやりがいも充実度も申し分ありません
     

    保育の現場経験も生かされるので保育士にとっては活躍の幅が広がる大きなチャンスになりますよ。
     

    子どもの預け先に悩んでいるお母さんたちをサポートするためにも、保育コンシェルジュへの転職について考えてみてはどうでしょうか?