保育士が避けて通れない課題は保育日誌をはじめとする書類の山です。
 

日々の保育で疲れ切っているにも関わらず、書類を目の前に悪戦苦闘し、時には書き終わらず残業することも少なくありません。
 

特に保育士になりたての方は、毎日書類を持ち帰らないと仕事が追いつかず挫けそうになるときもあるのではないでしょうか?
 

養成校の出身者なら、保育実習で実習日誌を必死になって書き綴った日々を思い出すかもしれませんね。
 

実は保育日誌を効率よく上手に書くためには、欠かせないコツがあるのです。
 

今回は保育日誌・保育経過記録の様式や目的、保育日誌を効率よく仕上げるコツや注意点についてお話していきます。
 

1.保育日誌・保育経過記録とは

 

保育士が日々記入する書類には保育日誌と連絡帳がありますが、連絡帳は0~2歳児の場合、毎日家庭と情報交換を行わなくてはならないことから、お昼寝の時間が主な記入の時間になります。
 

園児が降園する前には必ず書き上げておく必要があるので、書類の中では優先順位が一番高く、連絡帳に集中していると保育日誌がおろそかになりがちです。
 

保育日誌は勤務後に落ち着いてから一気に書こうと思っていると、結局は残業になったり持ち帰りになったりしますし、日々の保育を反省して今後に活かすための記録なのに、書類が負担になって保育に支障が出ては本末転倒ですよね。
 

中には「もっと保育に集中したい、書類なんて無くせばいいのに」と思う方もいると思います。
 

保育の現場で残業の原因になっていることは事実ですが、保育日誌と保育経過観察記録には、日々の保育を充実させるヒントがたくさん詰まっているのです。

①保育日誌をつけることで、保育の課題が明確になる

 

保育日誌は、日々の保育がどのように実施されたのかを記録するものです。
 

その日の「保育のねらい」と関連付けたポイントを定め、子どもがどう行動したか、保育者がどう援助して何を思ったかなど具体的に記入します。
 

様式は各園によって異なりますが、記録する項目は以下のような内容です。
 

  • 日付、天候、記入者名
  • 園児出欠席人数、欠席理由
  • 子どもの健康状態
  • 保護者への連絡事項
  • 保育のねらい、活動内容
  • 保育実践内容
  • 反省、評価

  •  

    こうして決まった項目に当てはめて毎日記録していき、定期的に読み返すことで子どもの発達過程を理解し保育の指針を定め、現在の保育課題を明確にします。
     

    ただ何となく毎日保育をして過ぎ去るのでは、保育士として自分がどのように成長したのか感じられずに終わってしまうので、やはり保育日誌は大切な記録になりますね。

    ②保育経過記録は園児の発達を明確にし、保育士の連携を強める

     

    保育経過記録は、保育日誌をもとに子どもひとりひとりの遊びの様子、発達上特に記録が必要な内容を個別に記録していきます。
     

    様式は各園や月齢によっても様々ありますが、記録する項目は大体以下のとおりです。
     

  • 生活に関すること(例:排泄はトイレでできるか、着脱衣が自分でできるかなど)
  • 運動能力(例:歩行は完成したか、遊具で遊べるかなど)
  • 人間関係、情緒面の発達 (例:友達とごっこ遊びを楽しむか、簡単な約束が守れるかなど)
  • 言葉の理解力 (例:自分の名前や年齢が言えるか、あいさつができるかなど)
  • 表現、感性(例:歌を口ずさむか、顔が描けるかなど)
  • 家庭との相談、連絡事項
  •  

    保育日誌がクラス保育全体の計画に対して行う実践記録だとすると、個人に対して詳細な発達を記録していくのが保育経過記録です。
     

    全体の保育計画を実践していく過程で、ひとりひとりの子どもがどのように発達を遂げたのかを記録することにより、個人のプロフィールを明らかにします。
     

    私はこの書類をはじめて見たとき「自分の子どもに書いている母子手帳の記録よりもはるかに丁寧で詳しく書かれている……」と衝撃を受けました。
     

    担当の保育士がいかにその園児を見ているかよく分かりますし、何より子ども個人の発達過程が一目瞭然ですよね。
     

    書く手間はかかりますが、保育経過記録がなければ園児個人の発達は担任にしか把握できなくなってしまうので、園内の連携が上手に図れません。
     

    保育経過記録は指導案の見直しからクラス担任の引き継ぎまで、他の保育士と連携を取る上でも必要不可欠な書類なのです。

    2.テンプレート作成が効率化の鍵

     

    みなさんは初めて保育日誌を書いた時のことを覚えているでしょうか?
     

    私が初めて取り組んだときは、何を記入すればいいのかわからずに時間だけが過ぎ、情けないことに最後は周りの助言を受けてやっとの思いで完成させました。
     

    その後も先輩保育士のアドバイスを受けたり自分で色々調べたりしましたが、はじめのうちは勤務時間内には書き上がらず悪戦苦闘の毎日でした。
     

    もともと保育士試験を受験して保育士になったためそれまで保育日誌を書いた経験がなく、実践的なことは働きながら習得していくしかなかったのです。
     

    日々必死に書き続けているうちに、段々と上手に効率よく仕上げるコツがわかってきました。

    ①テーマ別にテンプレートを用意する

     

    私が保育日誌を前にして悩んでいるときに、先輩保育士が見せてくれたものが過去の保育日誌と保育専門雑誌です。
     

    「書けない時は、過去の日誌や専門雑誌の言い回しを使うのが一番手っ取り早い」とアドバイスをもらい、最初はただそれらを参考にしてひたすら書き写しながら、自分なりの言葉を当てはめて日誌を埋めていく日々が続きました。
     

    実はこの作業が、保育日誌作成の効率化のヒントに結びついていたのです。
     

    もちろん丸写しは駄目ですが、ある程度言い回しをテンプレート化し溜めていくことで、文章がスラスラ書けるようになるのを実感できました。

    ・基本的な言い回しのテンプレート

     

    テンプレートとは、次のようなものです。
     

    「天候に恵まれたため、園庭に出て○○を行った。」
    「体調の優れない園児が多かったため、室内で○○して過ごした。」
    「A児が○○と言い△△な様子だったため、□□ではないかと考え◎◎することにした。」
    「B児の登園時に母親から○○という相談を受け△△と回答した。」
    「○○時頃C児が△△で□□に熱心に取り組んでいた。」

     

    これらに単語を入れて組み合わせ、完成した文章全体で
     

  • When:いつ
  • Where:どこで
  • Who:誰が
  • What:何を
  • Why:なぜ、どうして
  • Whom:誰に、誰と
  • How:どうやって
  • How much:どれくらい
  •  

    上記の6W2Hがほどよくきちんと盛り込まれているかを最後に確認すると、より言いたいことが伝わる文章になります。
     

    状況に合わせて書きたいことを文章化できるように、使えそうな文面を「給食時」「午睡準備時」「保護者対応」などテーマ別に分けてテンプレートを蓄積しておくと便利ですよ。
     

    語尾がですます調・である調のどちらなのかは各園の記録の仕方によるので、確認して統一性を持たせることもポイントです。

    ②ねらいの設定は保育所保育指針の言い回しを活用する

     

    私が個人的に一番苦労した項目が、保育のねらいです。
     

    ねらいが定まると、そこから
     

    ねらい
     ↓
    実践・観察
     ↓
    子どもの成長・変化
     ↓
    反省・評価

     

    とすべての項目がすんなりと書き出せるので、ねらいをきちんと定めることはとても大切です。
     

    はじめはポイントがわからずに苦戦しましたが、過去の例文を見ているうちに「あれ、この文面どこかで見たことがある!」と気付きました。
     

    そう、これは保育士試験で勉強した保育所保育指針です。

    ・保育所保育指針を熟読するとねらいが定まりやすくなる

     

    ねらいの設定は、保育所保育指針がカギを握っていると言っても過言ではありません。
     

    保育所保育指針の3歳以上児における「表現」に関わるねらいと内容を見てみると、以下のようになります。
     

    『表現』
    感じたことや考えたことを自分なりに表現することを通して、豊かな感性や表現する力を養い、創造性を豊かにする。
    (ア) ねらい
    ① いろいろなものの美しさなどに対する豊かな感性をもつ。
    ② 感じたことや考えたことを自分なりに表現して楽しむ。
    ③ 生活の中でイメージを豊かにし、様々な表現を楽しむ。
    (イ) 内容
    ① 生活の中で様々な音、形、色、手触り、動きなどに気付いたり、感じたりするなどして楽しむ。
    ② 生活の中で美しいものや心を動かす出来事に触れ、イメージを豊かにする。
    ③ 様々な出来事の中で、感動したことを伝え合う楽しさを味わう。
    ④ 感じたこと、考えたことなどを音や動きなどで表現したり、自由にかいたり、つくったりなどする。
    ⑤ いろいろな素材に親しみ、工夫して遊ぶ。
    ⑥ 音楽に親しみ、歌を歌ったり、簡単なリズム楽器を使ったりなどする楽しさを味わう。
    ⑦ かいたり、つくったりすることを楽しみ、遊びに使ったり、飾ったりなどする。
    ⑧ 自分のイメージを動きや言葉などで表現したり、演じて遊んだりするなどの楽しさを味わう。

     

    上記を参考にして、試しにお遊戯会の練習をした日のねらいを定めてみます。
     

    私が考えたのは「クラスのみんなと音楽に合わせて踊る楽しさを味わう。」というものです。
     

    「○○する楽しさを味わう。」という言い回しをそのまま使っているのがわかりますね。
     

    このように保育のねらいは、その日の活動内容が保育所保育指針の5領域の何に当てはまるのかを確認し、参考にして設定するとスムーズに書き進めていけますよ。

    ③上手なエピソード記録で日誌をより充実させる

     

    私の職場にいる定年間際のベテラン保育士は、いつもメモ帳とペンを持ち歩き、気づけば何かを書いています。
     

    何をメモしたのか想像できないときには積極的に聞くようにしていますが、いつも「ひとりひとりの子どもをよく見ているのだな……」と驚くことばかりです。
     

    例えば「今Aちゃんが初めて自分でスコップを持って土を掘ろうとしていたの。土が硬くてうまく掘れなくて、それでも諦めずによく土を観察して柔らかいところを見つけて掘り出していたので、素晴らしいなと思って。」といったお話を聞かせてくれることも少なくありません。
     

    テンプレートを活用しつつ、このようなエピソード記録も保育日誌・保育経過記録に盛り込むと、より具体的に園児の姿に迫ることができるのです。
     

    テンプレート活用をマスターして効率化に成功し、ある程度スラスラ文章が書けるようになったときにはぜひ挑戦してみてくださいね。

    3.初めての日誌!保育実習日誌を書くときの注意点

     

    養成校に通うと、保育実習日誌が一番初めに書く保育日誌になります。
     

    実習中は毎日書かなければならず、慣れない保育と合わせるとかなりの負担です。
     

    「実習日誌を書くときはどういったことに気を付けたら良いの?」と実習前から不安に思う方も多いのではないでしょうか。
     

    実習生の指導を担当した保育士に聞いた、実習に行く前に確認しておいてほしい注意点を次にお話していきます。
     

    ①文法上の基本がなっているかをチェックしておこう

     

    意外と見られているのが基本的文法上の問題です。
     

    保育実習日誌は文量が多いため、読み手側が負担に感じる文法上の欠点はマイナスになります。
     

    よく指摘されるポイントは、
     

  • 書き言葉を使えているか
  • 主語、述語がきちんと対応しているか
  • 同じ言葉を繰り返し使っていないか
  • 誤字脱字がないか

  •  

    など、文章を書く上では基本的なものばかりです。
     

    慌てると見落とすことがあるので、書き終えた後は必ず見直す癖をつけるておくといいかもしれません。
     

    誤字脱字に関連することですが、保育実習日誌は手書きで記入していくことから、保育の現場で使われる漢字を書けるようにしておくとスムーズに書き進められます。
     

    私が保育日誌の書き始めでつまずいた漢字は、「連携」「廊下」「配膳」「帽子」「長靴」でした。
     

    保育園の一日を思い浮かべ、保育に関する物や出来事の漢字は前もって書けるようにしておくと安心ですよ。

    ・表現の仕方

     

    保育者として園児の記録を残す際にNGな表現の仕方があるため確認しておきます。
     

    私もはじめによく注意されたのですが、子どもの活動をただ遊びの羅列で表現するのはよくありません。
     

    具体的な例としては、
     

    「園庭で鬼ごっこ、砂遊び、すべり台などみんなそれぞれ好きな遊びをしている。AさんとBさんはボール遊びをしていた。」(NG例)

     

    というもので、これでは保育者の着目点がわからず誰にでも書ける文章になってしまいます。
     

    これに工夫を加え、
     

    「園庭で年少クラスの子が鬼ごっこをしている。AさんとBさんはボール遊び。ボールが年少さんにぶつからないように、充分に周囲に注意する姿が見られた。」(良い例)

     

    のような感じにすると、保育者が着目したポイントに文章を絞っているので一気に表現が豊かになりましたね。
     

    表現の仕方に関してもうひとつ、無意識に使ってしまいがちなNG表現が「~させる」「~してあげる」です。
     

    絵本を読んであげた、折り紙で遊ばせたなどの表現は子どもの主体性が見えないため、特に幼児には禁句になっています。
     

    実習前に頭にいれておけば避けられることなので、ぜひチェックしてください。

    ②記録の取り方、ここがポイント

     

    実習日誌に必要な情報は、
     

  • 子どもの活動
  • 保育者の動き
  • 実習生の動き
  • 気付いたこと

  •  

    の4つに分けることができます。
     

    上から3つはなるべく具体的に(例えば園庭遊びなら遊びの内容など)記録することが原則ですが、全ての活動・全ての保育者の動きを把握して記録するのは残念ながら不可能です。
     

    私もはじめはとにかく全部を把握しなければと思い、結局全体をぼんやりと見て終わり、遊びの種類を羅列する記録しか残せませんでした。
     

    後からベテラン保育士に「着眼点を決めて、目的意識を持って見ないと駄目ですよ」と指摘されて改善できましたが、自分が注目したポイントに視点を絞れると「気付いたこと」も自然と思い浮かぶようになります。
     

    ③実習のまとめと反省のポイント

     

    実習の期間が終了すると、
     

  • 期間全体を通して学んだこと
  • 感じたこと
  • 反省点
  • 今後の課題

  •  

    などをまとめて保育実習日誌と共に提出します。
     

    実習を担当したことのある保育士は、このレポートを見ると実習生の取り組みが充実していたかどうかよくわかるといっていました。
     

    一番がっかりしてしまうのが、「子どもに好かれて嬉しかった」というような表現ばかりで、実習中どんな保育を目指した結果そうなったのか過程が書かれておらず、全体的に自己分析の浅さが読み取れる文章だそうです。
     

    実習のまとめ・反省のポイントは、
     

  • 実習を通しての心境の変化
  • 実習中の悩み
  • 実習中に気付いたこと
  • 感銘を受けた保育者の援助の様子
  • これからの課題

  •  

    が丁寧に書かれており、実習生の充分な自己分析と今後に生かせる反省点がしっかりわかる文章になっているかどうかです。
     

    私の周りにいる養成校出身の保育士は、実習日誌は一生の宝物だと言います。
     

    実習中は日誌に苦悩することも多いと思いますが、ぜひ一生の宝物を作る前向きな気持ちで向き合ってくださいね。

    保育日誌は自分なりのテンプレートを作ると必ず効率よく仕上がるようになる

     

    保育士にとって保育日誌や連絡帳・保育経過記録といった書類は、残業のもとになる厄介な存在です。
     

    養成校出身の方は、保育実習中に文法や表現法などの基本を押さえておくことで、実際の現場に出たときにもある程度スムーズに書くことができます。
     

    それでも日誌が書けなくて残業ばかりといった状況に陥ったときには、書くためのテンプレートを作ってストックしていく作業を根気よく続けていくことが大切です。
     

    自分なりのテンプレートをたくさん持つことで、文章が効率よく上手にスラスラ書けるようになり、残業を持ち帰らなくても済む日が必ずやってきますよ。
     

    挫けそうになることもあるかもしれませんが、まずは面倒でもテンプレートを作り、たくわえていくやり方に挑戦してみてはどうでしょうか?