近年保育園の待機児童が社会問題になっていますが、待機児童解消に向けて充分な保育士を確保できない理由のひとつに給料の低さがある、という話をニュースなどで耳にして不安に思っている方も多いのではないでしょうか?
 

「子どもが好きで保育士を目指しているけれど、お給料が低かったら将来心配……」
 

と考えて、保育士になることをあきらめる人も少なくありません。
 

いくら好きな仕事ができるといっても、生活できなくなっては意味がありませんよね。
 

今回はそのような不安を少しでも和らげるために、保育士の給料と今後上がる見込みがあるのかについて政府の政策等に触れながらお話ししていきます。
 

1.給料が安すぎる?保育士の給料事情

 

ハローワークにおいて実施した保育士として就職を希望しない求職者に対する意識調査では、賃金が希望と合わないからという回答の割合が最も高く、47.3%を占めていました。
 

私の勤めている保育園でも、養成校を出て就職したばかりの保育士が、

仕事に対しての給料の安さを理由にわずか半年で辞めて転職していったことがあります。
 

実際のところ、保育士の給料はどのくらい安いのでしょうか?
 

①保育士の給料、平均像に迫る!

 

厚生労働省平成26年賃金構造基本統計調査によると、保育士の平均収入は以下のとおりです。
 

【男女総合】
平均年収:316.7万円
平均月収:21.6万円
年間ボーナス等:57.5万円
平均年齢:34.8歳
平均勤続年数:7.6年
総労働時間:172時間/月
 

【男性】         【女性】
割合:6.6%        割合:93.4%
平均年収:351万円     平均年収:314万円
平均年齢:31.4歳      平均年齢:35.1歳
 

これだけを見ても高いのか低いのかよくわからないので、同じく厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」データから算出した近年の保育士の年収の推移と、他職種との差を比較したグラフを見てみます。
 


 

これを見ると保育士の平均年収の低さが一目瞭然ですね。
 

全産業平均年収との年収差がなんと130万円ほどもあり、その上、保育士の年収推移を見ると300万円前半で上がることなく10年間ほぼ横ばいです。
 

同じ保育業界の仲間である幼稚園教諭と比べても、年収差が30万円ほどあります。
 

これはなかなか衝撃的な数字だと思いませんか?

・都道府県別によっても平均年収に差が出る?

 

私は地方に住んでいるのですが、求人情報を眺めていて
 

「お、これは他の保育園よりも給料が良いな」
 

と思ってよく見ると、住込みや住宅手当ありの求人で勤務地が東京や神奈川ということがよくあります。
 

実は保育士の平均年収は都道府県別に大きく開きがあるのです。
 

平均年収を高い順に見ていくと、
 

  • 和歌山県で382万円
  • 愛知県で372万円
  • 東京都で369万円


 

になり、低い順にみていくと、
 

  • 佐賀県で220万円
  • 福島県で243万円
  • 山形県で259万円


 

になります。
 

地域における物価や土地単価の違い、人口密集率の違いが出ているといえばそれまでですが、
1位と最下位では162万円も差がついてしまっているのが現状です。
 

同じ仕事をしているのに、住む場所が違うというだけでこれほどの格差が出る状況は、あまり好ましいとは思えませんよね。

②保育園で働く保育士の給与内訳は?手当と賞与に注目

 

保育士の給与内訳は、基本給に手当と賞与が付加される形になっています。
 

基本給は手当を除いて毎月必ず支払われる基本賃金です。
 

保育園では基本的に、一般企業にもあるような「通勤手当」「役職手当」の他に「特殊業務手当」や「調整手当」があるところが少なくありません。
 

「特殊業務手当」とは、保育園の行事で発生する超過業務に対して支払われるもので、残業代といえば分かる方も多いのではないでしょうか?
 

保育園には一年を通して遠足や運動会など季節に合わせた行事が設けられていますが、やはり行事の時期になると準備などで忙しく、勤務時間通りの帰宅が難しくなります。それを見越して手当が設けられているのです。

・調整手当と扶養手当は職場によって違う?

 

「調整手当」とは、保育士としての能力や経験を評価して支払われるもので、

基本的には勤続年数によって上がっていきますが、勤務先によって基準は異なります。
 

他にも「扶養手当」などがある園もありますが、手当の種類は園によって違い、中には手当自体がないところもあるので注意してください。
 

賞与は皆さんご存知のいわゆるボーナスのことですが、基本給をもとに2~5か月分と園によって差があるので、就職の際はよく確認しておくと年収が把握しやすいですよ。
 

③平均月収は21.6万円でも、手取りで考えるとどうなるの?

 

月収21.6万円あれば充分に生活できると思われるかもしれませんが、残念ながらそのまますべてが現金として手元に残るわけではないです。
 

保育士だけでなく、日本で働く労働者には
 

  • 住民税、所得税の支払い
  • 健康保険の加入
  • 厚生年金保険の加入


 

が義務になっており、雇用主に対して義務付けられている雇用保険の加入についても、雇用者が少額負担しなければなりません。
 

保育士ならではの費用というものもあり、給食費が給与から天引きされます。(個人的には給食は栄養も満点で、お値段も自分で昼食を用意するよりもお得なのでおすすめです。)
 

これらを差し引いて、気になる手元に残る手取り金額ですが……大体17.2万円ほどです。
 

税金は改定されて変動することがある上に、特に健康保険税は市町村によって金額の差が大きいので、これも大体の目安と思っておいてください。
 

自分の住む市町村で健康保険税がどのくらいなのか把握しておくと、

手取りの予想ができますので、一度確認してみるといいかもしれません。
 

③意欲ある若者が出鼻をくじかれる?初任給の低さ

 

保育士は離職率が高いと聞いたことはありませんか?
 

私自身が保育園に勤めてみて感じたことですが、特に養成校を出たばかりで就職した若い人がすぐに辞めていくことが多いです。(もちろん長く勤める人も沢山います。)
 

「勤めてみたら、想像したような仕事じゃなかった……」
 

というように、仕事内容が理由で辞める人ももちろんいますが、先ほどもお話したように、頑張っても給料が低くて「労働意欲が削がれた」と別の職種に転職していくケースも珍しくありません。
 

厚生労働省のデータでみると、20~24歳の男性保育士の場合、
 

  • 平均年収260.4万円
  • 平均月収19.3万円


 

女性保育士の場合は、
 

  • 平均年収257.3万円
  • 平均月収18.5万円


 

になっています。
 

女性保育士の場合を考えてみると、1年目は先に述べた平均月収よりも低いと考えて平均初任給は約17万円、ここから先ほど述べた各種保険料と給食費が差し引かれてしまうと、初任給の平均手取り額は約14万円にまで落ち込むというのが実際のところです。
 

職場によっては賞与が初年度支給されない場合や、支給されても年に1回ということもあります。
 

月14万円で生活するとなると相当切りつめないといけなくなってしまいますし、就職したばかりの若者には本当に辛いですよね。

2、給料は長い目でみると上がる?政府の政策に注目!

 

「保育士はやっぱり薄給なのか……保育士あきらめようかな。」
 

と感じた人もいると思いますが、ここからが未来に希望の持てる話になります。
 

保育士の給料がどのように賄われているか考えたことがある人は意外と少ないかもしれません。
 

保育園の運営費から人件費が出ているのは当然のことですが、給料アップについて考えるためにも保育園の運営費の内情を知ることが大切です。

①保育士試験「児童福祉」にも出題される!保育所運営費とは

 

保育士試験でも児童福祉の費用負担については例年出題されますが、この辺りの単元は難しい単語が多く複雑なので、正直にいうと私は苦手でした。
 

保育所の運営に関係のある部分のみをピックアップしましたので、押さえておいてください。

・応能負担、応益負担とは?

 

保育所の運営費は、主に国や都道府県・市区町村の補助金と保護者から徴収する保育費で賄われており、保育費については認可保育園では応能負担・認可外保育園では応益負担です。
 

応能負担では、所得能力に応じて支払う保育費が変わるようになっているため、

保育料の徴収は各世帯の住民税の所得割額によって算定され、各自治体が行っています。
 

所得が低ければ低いほど払う保育費も少なくて済み、保育費がそれほど家計の負担にならず安心して働きに出られるので、利用者としてはとてもありがたい負担制度だと思いませんか?
 

一方応益負担では、世帯の収入関係なく、受けるサービスによって保育料を負担するのが一般的です。保育料の徴収も保育園が自ら行うことになりますが、自治体によっては保護者の負担軽減のために補助金を設けているところもあります。

・公的な補助金等の仕組みも

 

保育園の所在地・定員数・子どもの年齢に応じて、子ども一人あたりの費用(保育単価)が定められており、各月初日の在籍児童数に保育単価を乗じた額が、毎月保育園に支払われています。
 

他にも職員1人あたりの平均勤続年数に応じて行われる「民間施設給与等改善費加算」という制度もチェックしておきたいところです。
 

保育士試験にも出題されるお話ですので、難しいところですが頭に入れておいてくださいね。
 

②保育士の給料を上げるにはどうしたらいいの?

 

保育園の運営費は、標準的な保育園で8割が人件費に消えてしまいます。
 

運営費は先ほどみたように、公的な補助金と保育費からなっているので、そのどちらかかもしくは両方が上がれば人件費も上げることができるというわけです。
 

保育費は認可保育園では応能負担なので保育園が勝手に上げるということはできず、認可外でも保育費が高ければ預ける保護者も減ってしまうので、保育費を大きく上げるのは難しいことが分かるのではないでしょうか?
 

保育士の給料を上げるには公的な補助金を上げる他にはない、ということになりますが、公的な補助金というのは税金ですから、国や都道府県・市区町村が予算を立てて確保してくれないと上げることができません。
 

ここで、国の政策が重要になってくるのです。

③政府が打ち出す「保育士確保プラン」に期待大!

 

近年待機児童問題が社会問題として大きく取り上げられていますが、この問題を解決するために政府も動き出しています。
 

待機児童を解消するために保育園を増やすのはもちろんのこと、保育士として働く人材を増やすために保育士の処遇改善に乗り出しており、2017年からは保育士の月給を2%上げると政府の方針で決定されたのは知っている方も多いのではないでしょうか?
 

月給2%ということは、実際には6000円程度の月給アップになるので、上がると言っても「たったのそれだけ?」と思われるかもしれませんが、この流れ自体を歓迎するべきです。
 

経験を積んだベテラン保育士には、月給4万円程度を手当するという方針も打ち出しています。
 

厚生労働省では、待機児童の解消をめざして「待機児童解消加速化プラン」と「保育士確保プラン」により、2017年度末までに約6.9万人の保育士を新たに確保することを目指していることも見過ごせません。
 

このプランにはもちろん、働く職場の環境改善・保育士の処遇改善が盛り込まれています。
 

保育士試験を年に2回行うことに着手し、試験に向けた学習費用も支援するなど、保育士確保に向けて具体的にお金を動かしているところなのです。
 

果報は寝て待つ!期待が持てる保育士の給料アップ

 

待機児童に対する社会的な注目度が高い中、今後も国がどんどん政策に乗り出すことが期待できると言っても過言ではありません。
 

やりがいだけではなく、給料の面から考慮しても保育士になる価値は充分にありますし、今すぐに給料が改善するということはなくても、長い目でみると、今後の給料アップはおそらく間違いないはずです。
 

特に中堅保育士に対しての手当加算の動きが大きいので、

長く勤めれば勤めるほど恩恵を受けられるチャンスが増えていきますよ。
 

保育士としての経験を積みながら、処遇改善を待つことが給料アップの近道と言えるのではないでしょうか?