保育士試験の実技は、3分野の中から2つを選べる選択制です。
 

「受験申請書提出後の分野変更はできません」の注意書きを見て、

どれを選択すると楽に突破できるだろうかと悩んでいる方も多いと思います。
 

いざ筆記試験を突破して実技試験を勉強し始めたら、選んだ分野が思ったよりも難しく感じて、「あの分野にしておけば良かった……」なんて後悔をしたくないですよね。
 

保育士試験の実技試験について、これを機会に改めて考えてみてはどうでしょうか?
 

今回は保育士試験の実技内容と難易度・分野選択のときに考えるポイントや、私の実体験をもとに実技を勉強する際の心構えについてお話していきます。
 

1.実技試験の内容と合格率からみる難易度

 

実技試験は筆記試験を全科目合格した人のみに行われます。
 

筆記試験科目の結果通知書が届いて約1か月後に実技試験があるため、勉強する期間があまりないと焦る人もいるかもしれません。
 

しかし筆記試験の時にきちんと自分の答えを控えておくと、終了後に大手の通信講座会社が出す解答速報を使って自己採点できるので、約2か月の勉強期間があります。
 

自己採点で結果が把握できていれば、実技試験まで余裕を持って勉強に取り組めますよ。
 

実技試験で勉強する分野の内容は次のとおりです。
 

  • 音楽表現に関する技術
  • 造形表現に関する技術
  • 言語表現に関する技術
  •  

    上記3つの分野から2つ選び、両方とも満点の6割以上(30点以上)で合格です。
     

    念のため実技試験の詳細な内容と合格率についてまとめておきましたので、チェックしてみてくださいね。
     

    ①音楽表現に関する技術

     

    平成29年度前期日程の課題は次のとおりです。
     

    幼児に歌って聴かせることを想定して、課題曲の両方を弾き歌いする。

    求められる力:保育士として必要な歌、伴奏の技術、リズムなど、総合的に豊かな表現ができること。

    課題曲
    1.『こいのぼり』 (作詞:近藤宮子 作曲者不詳)
    2.『一年生になったら』 (作詞:まど・みちお 作曲:山本直純)

    • ピアノ、ギター、アコーディオンのいずれかで演奏すること。(楽譜の持ち込み可)
    • ピアノの伴奏には市販の楽譜を用いるか、添付楽譜のコードネームを参照して編曲したものを用いる。
    • ギター、アコーディオンで伴奏する場合には、添付楽譜のコードネームを尊重して演奏すること。
    • いずれの楽器とも、前奏・後奏を付けてもよい。歌詞は1番のみとする。移調してもよい。

    注意1 :ピアノ以外の楽器は持参すること。

    注意2 :ギターはアンプの使用を認めないのでアコースティックギターを用いること。カポタストの使用は可。

    注意3 :アコーディオンは独奏用を用いること

     

    課題曲の内容以外、細かい指定など例年どおりと言えます。
     

    ピアノ伴奏が最もポピュラーなので、例年9割以上の人がピアノ伴奏を選んでいるようです。
     

    私が受験した会場では、周りを見渡してもギターやアコーディオンを持っている人はいませんでした。

    ②造形表現に関する技術

     

    保育の一場面を絵画で表現する。

    求められる力:保育士として必要な造形表現(情景及び人物等を豊かにイメージした描写や色使いなど)ができること。

    • 表現に関する問題文と条件を試験の当日に提示します。
    • 当日示される問題文で設定された一場面を、条件を満たして表現しなさい。

    注意1:当日の持ち物(試験中机上に置けるもの)
    ・鉛筆またはシャープペンシル(HB~2B)
    ・色鉛筆(12~24色程度)
    ※水溶性色鉛筆の使用も可としますが、水分を塗布することは禁止します。また、クレヨン・パス・マーカーペン等の使用は不可とします。
    ・消しゴム
    ・腕時計(アラーム等の音が鳴らないもの。計算機、電話等の機能のついていないもの。置時計不可)
    ※携帯用鉛筆削りを会場内に持ち込むことは可としますが、試験時間中に使用する場合は、試験監督員の了解を得てから使用してください。
    ※受験者の間での用具の貸し借りは認めませんので、忘れないように注意してください。

    注意2:試験時間は45分です。

    注意3:解答用紙の大きさはA4判で、絵を描く欄の大きさは縦横19cmとします。(紙の種類は試験の当日に提示します。)

     

    こちらも例年どおりの出題ですが、近年は保育の一場面の設定が複雑なものであったり、描く人数が多かったり、お年寄りが登場したりとユニークな出題が増えています。

    ③言語表現に関する技術

     

    3歳児クラスの子どもに「3分間のお話」をすることを想定し、下記の1~4のお話のうち一つを選択し、子どもが集中して聴けるようなお話を行う。

    求められる力:保育士として必要な基本的な声の出し方、表現上の技術、幼児に対する話し方ができること。

    課題
    1.「うさぎとかめ」
    2.「おむすびころりん」
    3.「3びきのこぶた」
    4.「にんじん、ごぼう、だいこん」

    • 子どもは20人程度が自分の前にいることを想定する。
    • お話の編集、展開に関して特にきまりはありませんが、3分になるようにまとめてください。

    注意1:題名は開始合図のあと、一番最初に子どもに向けて言ってください。

    注意2:絵本・道具(台本・人形)等の一切の使用は禁止です。

    ※絵本を読んだり、道具を使ったりした場合は、不正行為になりますので注意してください。不正行為とみなされた場合、実技試験は無効となるほか、当該年試験から3年以内の期間で受験ができなくなる場合があります。(児童福祉法施行規則第6条の14第2項)

    注意3:3分間は退出できません。時間は係員が計ります。

    注意4:子どもに見立てた椅子等を前方に用意します。

     

    私が受験した平成25年度は話の題材を自分で考えなければなりませんでしたが、平成26年以降は4つの話の中からの選択制に変わっています。
     

    この4つは選択制になって以降1度も変わっていません。

    ④近年の保育士試験における合格率

     

    厚生労働省資料『保育士試験の概要』によると、近年の合格率推移は以下のとおりです。
     

    試験年 筆記合格率 実技合格率
    平成22年 15.4% 84.8%
    平成23年 16.8% 84.7%
    平成24年 27.6% 86.1%
    平成25年 24.6% 89.3%
    平成26年 26.7% 88.7%

     

    筆記試験の合格率が約2割な一方で、実技試験の合格率は約8~9割になっており、合格率だけでみると実技試験は決して難しくないという結果になっています。
     

    数字だけ見ると簡単なように思えてしまいますが、受験当時の私は油断ならない数字だと感じていました。
     

    というのも、そもそも実技試験は筆記試験で約2割の合格率をくぐり抜けてきた人しか受けられず、受験者の意欲やレベルが全体的に高いからです。
     

    そういった人たちが集まっても10人に1~2人落ちてしまうと考えると、決して侮れない数字と言っていいかもしれません。

    ・実技試験を受けなくてもいいって本当?保育実技講習会とは

     

    近年の動向として、待機児童解消に向けて保育士を充分に確保するために保育士試験の方法も変えようとする動きがあります。
     

    平成27年から地域限定保育士試験が始まり、

    保育士試験が年2回になったことは記憶に新しい方も多いのではないでしょうか?
     

    実は平成29年実施の神奈川県独自の地域限定保育士試験においては、実技試験に代わって保育実技講習会を受けることで保育士になることができます。
     

    これは厚生労働省が保育士養成課程等検討会地域限定保育士試験における保育実技講習会についての中で定めたもので、
     

  • 21時間の講習と演習
  • 6時間の実習

  •  

    上記を実技試験に代わるものとして認めたことを受けての実施です。
     

    この流れを見て「もしかして実技試験は将来無くなるの?」と思う方もいると思います。
     

    制度自体は非常に希望の持てる内容となっていますが、講師や実習先の確保など現場の負担を考えると全国で実施するとは考えづらいのが実際のところです。
     

    実技試験を受けないという新たな選択肢のひとつとして、ちょっと頭に置いておくくらいの気持ちでいてくださいね。

    2.どう選ぶべき?実技分野選択のヒント

     

    実技試験の合格率が分野別に出ていれば、より合格率が高い分野を選ぶことができます。
     

    私も分野別の合格率をチェックして選べばより有利と考え、受験申請前にインターネットで分野別合格率を探しました。
     

    しかし残念ながら分野別の合格率は公表されておらず、大手の保育士試験講座を受けた人の中だけでの集計結果があるくらいで、まともに参考にしても良いレベルの情報はありません
     

    分野別合格率の情報がない中で、受験申請のときに周りの人がどのようにして分野を選択しているのか気になる人もいるのではないでしょうか?
     

    私が周囲に聞いた中で参考になった選択法を、一般的なものから順に3つ次に紹介していきます。

    ①得意・不得意の消去法

     

    最もポピュラーな選び方は、自分が得意な分野を優先的に2つ選び取ることです。
     

    もしくはどれもやってみたことはないけれど、今までの人生経験を勘案してこれならきっと自分にもできるだろうと思う分野を選びます。
     

    中には「この分野は苦手で絶対に上達が見込めないから外す」という消去法で選ぶ人もいました。
     

    多くの人がこの得意・不得意を考慮しての消去法で落ち着きます。
     

    私の場合は受験申請の時点で自分には3つの分野に得手・不得手の能力差が無いと思っていたため、この方法は決め手にはなりませんでした。
     

    ②コストの面で考える

     

    ユニークだなと思ったのは、費用がかからないという理由で分野選択をした人の話です。
     

    保育士試験を全て独学で突破されていた方なのですが、とにかくお金をかけずに色んな資格試験を受験して資格を取ることが趣味だからという驚きの選択理由でした。
     

    保育士試験の実技はコストの面で見ると次の順でお得になります。
     

    順位 分野 想定されるコスト
    1位 言語表現 0円

    ※台本を図書館やインターネット上から見つけてアレンジ

    2位 音楽表現 市販の楽譜を購入すると楽譜代1000円前後

    ※受験申請の手引きにある楽譜をアレンジできれば0円

    最下位 造形表現 色鉛筆代600~2000円(メーカーによる)

    鉛筆、シャープペンシル50~120円

    消しゴム100円

    携帯用鉛筆削り300~500円

    練習用ケント紙1枚につき50円くらい

     

    とにかく安く済ませたい方はぜひ参考にしてみてください。
     

    最下位の造形表現では、道具を揃えるのにこまごまとお金がかかります。
     

    音楽表現も、注意が必要な分野です。
     

    家にピアノがない人の場合、練習は電子ピアノやキーボードで代用できますが、本番の会場では実物のピアノでの試験になることから、1度はお金を払ってレッスンを受ける覚悟が求められます。
     

    私も歌とピアノの音量バランスを確認するためにピアノ教室のレッスンを受けましたが、1レッスン4000~5000円が相場です。
     

    コストを抑えたい人にとっては痛い出費ですよね。

    ③到達点と評価のわかりやすさ

     

    私が実技分野選択の決め手にしたのは、到達点と評価のわかりやすさです。
     

    周りの口コミやネット上にある体験談を見ると、試験を受けた後の手応えと試験結果に大きくズレがあり、困惑する声が多く見受けられる分野がありました。
     

    それは、言語表現に関する技術です。
     

    最初から最後まで滞りなく、時間も充分に使って堂々と話し終えたにもかかわらず30点付近のギリギリ合格だった……なんて声も少なくありません。
     

    評価の基準が見えないということは、万が一落ちても次の年に何を改善して良いかわからないことになりますよね。
     

    その上自分でも失敗したと感じた結果の不合格ならば納得できますが、完璧にできたのに落とされたとなっては辛いと思ったので、私はあえて言語表現は外しました。
     

    基準が不明確な分野ですが、言語表現は自分の身体ひとつで成立し、いつでもどこでも3分で練習できる点で他の2分野よりもメリットが大きいです。
     

    得意・不得意の消去法やコスト面と合わせて、自分は何を選択するのがベストなのかよく考えてみてください。
     

    3.直すべきポイントさえわかれば、どの分野も努力次第で突破できる!

     

    実技を選択して申し込み、いざ筆記試験を合格して勉強に取りかかってみると、「あれ?私この分野実は苦手だった……?」と気付く場合があります。
     

    私は音楽表現と造形表現を選択しましたが、

    筆記が受かって勉強を始めたとき思い切り壁にぶち当たりました。
     

    音楽表現は難なく取り組めたものの、造形表現は時間内に描き終わらないのはもちろん、自分で何が駄目なのか気づけませんし、どうしたら良くなるのかもわからない事態に陥ってしまったのです。
     

    昔からノートの隅などにイラストを描くのが好きなこともあり、それまで絵は得意なのだと本気で思っていたためこれには非常に困惑しました。
     

    ①『造形表現』勉強の実体験

     

    私は不器用なくせに何にでも手を出していく無謀な性格なので、想定外なことが起きることには慣れています。
     

    困惑したのは事実ですが、すぐに悩むのをやめて状況を打破する思考に切り替えました。
     

    私はただのそこら辺にいる主婦なのだ、誰かの力を借りなければこの壁は乗り越えられない……そんな気持ちで通信講座の保育士試験実技対策に申し込むことにしたのです。
     

    その際見てもらったのが、この2つの絵になります。
     



     

    お誕生会がテーマの絵と、劇発表の準備や練習でのやりとりがテーマの絵です。
     

    こんなに拙い絵でも45分以内に書ききるなんてことは到底できず、どこを改善すると上達できるのか見当もつかない状態でした。

    ②客観的アドバイスの重要さ

     

    通信講座では、描いた絵といま困っていることを書いて郵送で送ると、担当の方から丁寧なアドバイスが返ってきます。
     

    その時に指摘されたのが以下のことでした。
     

  • 輪郭線の色は黒鉛筆で書くと濁ってしまうので避ける
  • 配色は無彩色を使わずピンクや暖色系を使う
  • 全部に着色することが重要なので白い部分でも白色を塗る
  • テーブルが必要なときは画面下まではみ出させ時間を短縮する
  • 高揚している子どもには頬に赤みを差して表情を引き立たせる
  • できるだけ人物の全身を入れる
  • 小道具のこだわりは捨てて書きやすい背景を用意する
  • 基底線はシンプルに横に引く
  • 背景よりも人物は濃く塗る
  • ふちはやや濃く、中はやや薄く塗り立体感を出す
  • 屋内や園庭などの背景はパーツを用意して組み合わせるだけにする
  • 登場人物をあらかじめ用意しておき(先生1人、子ども3人ほど)、テーマに合わせて配置する
  •  

    これを見てようやく自分が改善するべきポイントや効率的な勉強法にも気づくことができたのです。
     

    特にパーツを組み合わせ、テーマに合わせて配置し絵を描くという点は目からウロコでした。
     

    このように他人の客観的なアドバイスを受けることで、自分の弱点や具体的な改善点がわかり、一気に上達します。
     

    これはどの分野にも共通することですので、勉強に行き詰った時には周りの客観的な意見を求めてみるといいかもしれません。

    ③上達が自分でわかると勉強は楽しくなる

     

    アドバイスを受けて背景や人物などのパーツを揃えた後、最初に描いたのが次の2つの絵です。
     



     

    この時点で試験の2週間前になっていましたが、時間内に描き終えられた上に自分でも「この絵は○○が欠点だから次はもっと○○を改善していこう!」とフィードバックできるようになっていたため焦りは全くありませんでした。
     

    最初の絵と見比べるとその差は歴然としていますよね。
     

    描くほどに手ごたえを感じられたので、この時期は勉強がとても楽しかったです。
     

    ここから1日1枚45分で描く練習を重ねて本番を迎えましたが、気持ちには充分余裕があったことを覚えています。
     

    私の受験した平成25年は出題傾向が例年とは異なり、保育の一場面の設定が凝ったものになっていましたが、それでも時間内に慌てず仕上げることができ合格しました。
     

    その時の合格証がこちらです。
     


     

    絵画は自分でも納得の38点、保育士試験挑戦2年目で掴んだ合格でした。
     

    実技試験対策と勉強法のコツについては、こちらの記事にも詳しく書かれているのでぜひ見てくださいね。
     

    何を選択するかではなく、選んだ分野で適切なフィードバックを積み重ねることが大事

     

    実技試験分野の選択で悩む気持ちはよくわかりますが、選択した分野が何であれ、自分の改善すべき点が適切に把握できていれば努力の積み重ねで充分に合格できます。

     

    改善すべき点もわからなくなってしまった時には、

    謙虚な姿勢で周りに客観的なアドバイスを求めることが大切です。

     

    どの分野も結局は、試験本番までいかに適切なフィードバックを積み重ねたかで結果が分かれると言っても過言ではありません。
     

    保育士試験の難易度は実技の選択内容で決まることではなく、個人の取り組み方による部分も大きいのではないでしょうか?
     

    自分で選んだ分野を前向きに捉え、上達を日々楽しみながら勉強を重ね合格を掴み取れると嬉しいですね。