待機児童解消に向けて充分な保育士を確保するために、保育士試験の実施内容が近年変わってきています。
 

平成28年度からほとんどの都道府県で、保育士試験が年2回の実施になったことは記憶に新しいですが、それよりも1年早く地域限定保育士試験が年2回目の試験として実施されたことを皆さんは知っているでしょうか。
 

「3年間も働く場所が制限されるくらいなら、普通の保育士試験を受けたほうが良いような気もするけど……地域限定保育士って、実際どうなの?」
 

と思う人も中にはいますよね。
 

そんな方のために、今回は地域限定保育士に求められる役割と地域限定保育士試験の内容・難易度、受験から登録までの流れや、メリットデメリットについてお話していきます
 

1.地域限定保育士とは

 

私が保育士試験を受験した年には地域限定保育士試験は無かったため、地域限定保育士の存在を知ったのは実は最近のことになります。
 

職場の保育士に「最近は特定の地域でしか保育士として働けない人がいるらしいよ。」と教えてもらったのがきっかけでした。
 

興味を持ったので調べてみると、地域限定保育士試験は平成27年に始まったばかりで、まだまだ認知度の低い制度で試験の実施内容も不安定です。
 

始まったばかりで安定していないからこそ、通常の保育士試験と比べて試験の自由度が高く可能性に満ち溢れているとも言えます。

①地域限定保育士の可能性

 

地域限定保育士について、全国保育士養成協議会のホームページでは次のように記されています。
 

地域限定保育士とは

①地域限定保育士試験の合格者は、地域限定保育士として登録後、3年間は受験した自治体(特区区域内)のみで保育士として働くことができる資格が付与されます。
②地域限定保育士の登録を行ってから、3年を経過すれば、全国で「保育士」として働くことができます。
③通常の保育士試験で合格した科目については、地域限定保育士試験においても免除されます。また、地域限定保育士試験で合格した科目も、次回以降の保育士試験において免除できます。
※上記①~③以外の事項(受験資格や免除制度)については、基本的に通常の保育士試験と同じ取り扱いとなります。

 

この中で特に重要なことは、③の通常の保育士試験と地域限定保育士試験で合格科目の免除が相互に適用される点です。
 

筆記試験の科目合格は、基本的に合格した年を含めた3年間が有効期限になります。
 

つまり1年間のうちに受験できる回数が増えれば増えるほど、科目合格のチャンスも増えて保育士試験突破に近付くのです。
 

神奈川県の例のように、通常の保育士試験とは別の日程で独自に試験が行われる場合もあります。
 

年に2回どころか3回も受験できますから、1年以内の保育士試験合格も夢ではありません
 

私は年に1度しか試験が無かったときに受験して1科目だけ落としてしまい、やむなく翌年の繰り越しになったため、受験の機会が多いのは本当に羨ましく思います。
 

せっかくのチャンスですので、有効期限内にできるだけたくさん受験して合格を掴みとってくださいね。

②地域限定保育士に求められる役割

 

地域限定保育士が生まれた背景には、待機児童を解消する狙いがあります。
 

平成27年に厚生労働省が公表した保育士確保プランで、平成29年度末までに新たに確保が必要になると算出された保育士の数はなんと6.9万人です。
 

保育士が不足しているとよく耳にしますが、「そんなに足りないの?」とびっくりしてしまう数字になっています。
 

一刻も早く保育士試験を年に2回の実施に変えて保育士を増やそう……そんな国の思惑から、国家戦略特区の都道府県に先陣を切らせて地域限定保育士試験がスタートしました。
 

地方自治体が独自に試験を実施するとなると当然大きな負担になりますが、それでも実施に名乗りをあげるのは保育士不足が深刻な自治体が多いからと考えられます。
 

資格を取ったらそれで終わりではなく、保育士として働き社会に貢献することが求められているのです。
 

2.地域限定保育士試験について

 

通常の保育士試験と地域限定保育士試験にはどのような違いがあるのでしょうか?
 

もしも難易度に違いがあれば、難易度の低いほうばかり積極的に受験しようとする人が必然的に増えていきます。
 

試験の内容に関しても違いがあるならば、より自分が勉強しやすく合格を手にしやすいほうを選びたいですよね。
 

まだまだ歴史の浅い地域限定保育士試験ですが、客観的なデータや事実に基づいて通常の保育士試験との違いを次に解説していきます。
 

①地域限定保育士試験の難易度は?

 

第1回目の地域限定保育士試験が行われたのは、平成27年度です。
 

厚生労働省の資料『平成27年度保育士試験実施状況』にある合格率を実施地域別に比較すると、次のようになります。
 

都道府県 通常試験の合格率 地域限定保育士試験の合格率
千葉 22.9% 18.3%
神奈川 22.8% 23.6%
大阪 23.0% 22.0%
沖縄 14.1% 14.9%

※平成27年度は上記4県で地域限定保育士試験が行われた。
 

これを見ると初回から合格率に大きな開きはなく、難易度に実質的な差はないとわかりますね。
 

私も平成27年度の過去問に目を通してみましたが、通常の保育士試験と変わりのない内容でした。
 

翌年の平成28年度は通常の保育士試験がほとんどの都道府県で前期・後期と年に2回の実施に切り替わり、地域限定保育士試験と日程や試験問題が全て同じになってしまったことで試験の難易度は一緒です。
 

この流れを考えると、平成29年度に3回目となる新たな日程で実施される神奈川県独自の地域限定保育士試験においても、筆記試験の難易度に差をつけることはないと考えられます。
 

②実技試験が免除になる?保育実技講習会

 

通常の保育士試験と大きく異なるのは、保育実技講習会が実施される自治体があることです。
 

平成29年度の神奈川県による地域限定保育士試験のケースがこれに当たります。
 

保育実技講習会の制度は、厚生労働省が保育士養成課程等研究会「地域限定保育士試験における保育実技講習会について」の中で、
 

  • 21時間の講習と演習
  • 6時間の実習

  •  

    を実技試験の代わりに受講すれば、地域限定保育士資格を得られると定めたことから始まりました。
     

    実技試験を受けない選択肢ができたのは、苦手分野が多く実技試験を避けたい人にとっては大きなチャンスになるのではないでしょうか?
     

    ③受験から登録、資格を取得するまでの流れ

     

    平成29年度神奈川県独自の地域限定保育士試験は、保育士試験史上初めてとなる年3回目の保育士試験です。
     

    チャンスが増えるのは良いことですが、1年に3回全ての試験を受験することが可能かどうか各試験の日程が気になると思います。
     

    きちんと受験スケジュールを把握しておかないと、受験するつもりがあったのに申請期間が過ぎていて受けられない……なんて事態になりかねません。
     

    ・申請時期と試験日程

     

    申請時期や試験日程は次のとおりです。
     

    第1回(前期)
    【申請時期】平成29年1月5日(木)~平成29年1月31日(火)
    【筆記試験】平成29年4月22日(土)、23日(日)
    【実技試験】平成29年7月2日(日)

     

    第2回(地域限定保育士試験)
    【申請時期】平成29年4月5日(水)~平成29年5月1日(月)
    【筆記試験】平成29年8月12日(土)、8月13日(日)
    【保育実技講習会】平成29年10月から12月(この間5日程度)

     

    第3回(後期)
    【申請時期】平成29年6月29日(木)~平成29年7月26日(水)
    【筆記試験】平成29年10月21日(土)、22日(日)
    【実技試験】平成29年12月10日(日)

     

    これを見ると筆記試験が合格したかどうか確認できないうちに、次の試験に向けて受験申請をしなくてはならないのが分かると思います。
     

    もし全科目合格していたら、申請するときに支払うお金がもったいないと感じる人もいるかもしれません。
     

    実は支払いの猶予期間というのが設けられており、神奈川県独自地域限定保育士試験受験申請の手引きにきちんと書かれています。
     

    試験結果が出るまでは支払いを猶予してくれるので、安心してどんどん申し込んでくださいね。

    ・地域限定保育士にも登録が必要

     

    保育士試験合格したあとは登録事務処理センターに必要な書類を送り、保育士証を発行してもらう必要があります。
     

    私は合格後に保育士登録の手引きを取り寄せたため、登録までに3か月もかかってしまいました。
     

    保育士証がなければ保育士として働くことができません。
     

    就職を急いでいたわけはなかったので私の場合支障はありませんでしたが、すぐに保育士証が必要になる方もいますよね。
     

    特に、
     

  • すでに就職が決まっている人
  • 保育士として働くために転職活動をしている人

  •  

    発行に約2か月かかることに注意してください。
     

    地域限定保育士の登録も登録事務処理センターが窓口なっており、同様に登録が必要です。
     

    ・保育士証の違いと履歴書の書き方

     

    通常の保育士と地域限定保育士では、保育士証の様式が大きく違います。
     

    私の保育士証とツテから送ってもらった地域限定保育士証の写真を並べてみると……。
     



     

    地域限定保育士証には、登録の日から起算して3年を経過しないと普通の保育士登録証にはならない旨がきちんと書かれているのがわかります。
     

    地域限定保育士試験に合格した日からではなく、登録の日からという記述に注意が必要です。
     

    先ほど述べたように登録までには事務処理センターに書類を提出しなければならないため、あらかじめ手引きを取り寄せておいて合格後すぐに書類を出したとしても約2か月かかります。
     

    登録が遅れると3年の縛りがどんどん延びていってしまうことになってしまい、不利です。
     

    履歴書には「地域限定保育士資格取得」と書くことになりますが、登録から3年経てば「保育士資格取得」と書くことができるので、できるだけ早く受験した地域以外で保育士として働きたい人は迅速な登録を忘れないでくださいね。
     

    3.地域限定保育士のメリットとデメリット

     

    地域限定保育士についてここまでのお話をみてきて、
     

    「地域限定保育士制度は、保育士試験で資格取得を目指す人にとって本当に有利なのかよくわからなくなってきた……」
     

    という方もいると思います。
     

    簡単に、地域限定保育士のメリットとデメリットをまとめてみました。
     

    【メリット】

    • 働きたい地域で試験の実施があれば、合格後もすぐに保育士として働ける
    • 保育士の需要が高い自治体で働くことができる
    • 地域限定保育士試験で合格した筆記試験科目は原則3年間免除になる
    • 地域限定保育士試験の保育実技講習会は実技試験の代わりになる

     

    【デメリット】

    • 3年間は特定の地域以外で働くことができない
    • 保育士試験の勉強スケジュールが立てづらい
    • 地域限定保育士試験が毎年安定して実施されるかわからない
    • 受験回数を増やすと増やした分だけ受験費用がかさむ
    • 地域限定保育士に対する認知度が低い

     

    メリットについては語り尽くしてきましたが、デメリットも押さえておくことが必要です。

    ①合格した後に後悔する人がいる

     

    私が地域限定保育士について調べていると、「やっぱり普通の保育士資格が欲しかったな……」と後悔する合格者の声が見受けられました。
     

    構成労働省が行った平成27年地域限定保育士試験の実技試験会場における受験者へのアンケートによると、受験理由(複数回答可)として多く挙げられたのは、
     

    「早く保育士試験に合格するため」… 77.9%
     

    「受験地で保育士として働くことを希望するため」… 32.6%

    でした。
     

    続いて受験地での勤務を希望しない人の割合を見ると23.3%、なんと約4分の1の受験者が希望しないと答えていたのです。
     

    保育士試験にとにかく合格したいがために受験したものの、合格したのちは結局受験地での勤務を希望せずに3年間が経過するのを待つ人がそれなりにいたことになります。

    ②試験実施の形が安定しない

     

    始まったばかりで仕方のないことですが、地域限定保育士試験は実施する自治体が定まっているわけでもなく不安定です。
     

    申請間近にならないと実施されるかどうかもわからないことから、実施が発表されるまで試験スケジュールの見通しが立たず落ち着かない方も多いのではないでしょうか?
     

    平成29年度神奈川県のように年3回の試験実施や保育実技講習会を行うなど、それまでにない大きな変革が起きることもあるため、そろそろ方針をしっかりと定めて受験者が心理的に負担を感じることのないよう実施してもらいたいです。
     

    ③受験するたびに受験料がかさむ

     

    当然のことですが、受験回数が増えるとその分お金もかかります。
     

    保育士は登録料が4,200円と安価なのに対して保育士試験の費用は12,950円と高額です。
     

    通常の保育士試験と地域限定保育士試験どちらも値段は一緒なので、受験すればそれだけ費用が大きくなるのは避けられません。
     

    年に3回受験した場合38,850円と、なかなか懐に厳しい数字です。
     

    何度も挑戦する意欲のある人には、その1年間だけでも特別な割引措置があると良いのではないかと思わず提案したくなります。
     

    コストが低くて済むなら受験者も増えることが予想されますが、余計なお金を払いたくないからこそ試験勉強に力が入る面もあるため、やはり費用の設定は難しい問題ですね。

    ④地域限定保育士に対する認知度の低さが気になる

     

    私の職場でもそうですが、保育士の中でも地域限定保育士に対する認知度は低いです。
     

    中にはなんとなくのイメージで「試験内容が簡単だから、働ける地域が限定されるんでしょ?」と言う人もいます。
     

    実際には筆記試験の難易度は同じですし、詳しい内容に目を通してみると、実技試験の代わりになる保育実技講習会もかなり充実したものです。
     

    私は保育士試験で資格を得たので実戦経験がなく、現場に出るときにはまるでペーパードライバーのような感覚でとても不安でした。
     

    5日間にもわたる保育実技講習会が実技試験に代わることで、こうした不安を和らげて現場に出られる人が増えるのではないでしょうか?
     

    実技試験を避け講習会を受けるのはそういった意味でもとても良いことですよね。
     

    保育の現場にいる人たちにも、地域限定保育士に対する正しい理解が広がることを願います。
     

    地域限定保育士は始まったばかり!概要を理解してから受験しよう

     

    地域限定保育士について調べていくと、地域限定保育士試験は始まったばかりで実施の内容もまだ安定していないことがよくわかりました。
     

    特にここ数年は保育士試験の実施要項が毎年なにかしら変化しており、翌年の試験がどうなってしまうのか先行きが見えません。
     

    打てる対策として、筆記試験科目の合格数を増やす目的で地域限定保育士試験を利用するのも良いですし、保育実技講習会狙いで受験する手もあります。
     

    受験が終わったあと後悔しないためにも、受験の前には必ず今現在の保育士試験についてよく調べ理解しておくことが必要です。
     

    保育士試験をスマートに突破し、今まさに社会に求められている保育士として胸を張って働きたいですね。