地震や水害などの災害はあらかじめ防げるものではないですし、被害を受けた方は肉体的にも精神的にも大きな傷を負っています。
 

テレビや新聞で被災地の大変な状況を知るたびに何かできることはないかと考える看護師も多いのではないでしょうか?
 

このように災害で辛い思いをしている方の助けになりたい看護師さんは、災害支援ナースとして働いてみてください。
 

災害支援ナースは物品や人員などが限られた環境の中で働かなければならないことから、想像以上につらく厳しい仕事だと言えますが、大勢の被災者の方があなたのケアを待っているのです。
 

ここでは災害支援ナースになりたい方のために、登録方法や仕事の実際についてお話ししていきます。
 

1.災害支援ナースとは?

 

災害支援ナースは1995年の阪神淡路大震災をきっかけにできたものであり、東日本大震災や熊本地震などでも、被災者のケアに尽力する姿を目にしたことがある人もいるかもしれません。
 

①災害支援ナースの役割ってなに?

 

災害支援ナースは災害が発生した3日後~1ヶ月間、医療機関や避難所で被災者のケアを行う役割を担っています。
 

被災直後の地域の方々は想像を絶する以上のストレス下で生活しているという理由から、傷や病気のケアだけでなくメンタル面でのサポートも欠かせません。
 

私も東日本大震災の2年後に、仮設住宅の方を対象とした健康管理のボランティア活動に参加したことがありましたが、住民の方々は表面上こそ笑顔で過ごしていたものの、
 

一人一人とじっくりお話ししてみると、この先どうなるのかわからない不安や家に帰れないストレスで心になんらかの傷を負っている方も大勢いました。
 

震災直後と数年経った後では環境や心境は異なるとはいえ、どなたもつらい思いを抱えながら生活していることには違いないですので、少しでも笑顔で生活していけるよう心温まる看護を提供し、災害支援ナースとして被災者の心を癒してあげてくださいね。
 

・DMATとの違いとは?

 

災害支援ナースと災害派遣医療チーム(DMAT)、この2つの違いはいくつかあり、その1つとしてまず派遣時期が挙げられます。
 

災害支援ナースは災害から3日後~1ヶ月間のあいだに派遣すれば良い一方、DMATは災害発生直後真っ先に被災地に国内外問わず派遣しなければなりません。
 

医師を含めたチームで活躍するDMATはより緊急性の高い災害発生直後すぐに仕事を開始するため、任務の重大さがわかりますよね。
 

重症な患者さんを災害直後すぐに助けたいという思いでDMATになりたいと考える人もいると思いますが、実はこのDMAT誰にでもできる仕事ではないです。
 

DMATになりたい看護師は災害拠点病院に所属しているのが必須であり、それ以外の看護師はチームの一員になれないので、まずは所属している病院が災害拠点病院かどうか確認してみてはどうでしょうか?
 

②具体的な活動内容について

 

災害支援ナースは被災された方の心と体のケアを行う仕事というイメージを持っている方も結構いると思います。
 

具体的にどのような仕事かというと、
 

  • 患者のトリアージ
  • 避難所で暮らす人たちの体調管理
  • 避難所の感染予防
  •  

    といったものが行われていますが、この中で特に患者さんのトリアージに目が行った人も多いかもしれませんね。
     

    災害発生直後の現場は混乱状態であり、多くの人が治療を求めている一方、先着順に治療を行なっていては本当にケアが必要な人を助けることはできません
     

    看護師が緊急度の高い患者さんを判別して優先的に治療を受けられるようにすることで、一人でも多くの人を救えるのです。
     

    現場は常に物品も医療関係者も足りていないというのを忘れずに、冷静な目で患者のトリアージを行なっていってください。

    ③災害支援ナースに向いている人とは?

     

    災害支援ナースは被災地という混乱している現場に赴きますが、初めて見るような怪我をしている人や被災地の変わり果てた姿を目の当たりにすると、ショックを受けダウンしてしまう看護師も少なくありません。
     

    ケアをすべき看護師が倒れてしまってはハッキリ言って足手まといですし、一刻も早く助けを求めている被災者の人たちからは、何のために被災地に来たのかと言われてしまいます。
     

    一方でどんな環境でも動じないタフなハートを持っている人であれば災害支援ナースに向いていますので、現場でもしっかりと自分の役割をまっとうできますよ。
     

    「あなたがいてくれてよかった。」と言われるような看護を提供できるように、心身ともに鍛え上げるのがポイントです。
     

    2.災害支援ナースになるには?

     

    災害支援ナースは被災地の方々の安心安全な暮らしを守るためにはなくてはならない存在であり、1人でも多くの看護師が災害支援ナースとして働くのが大切です。
     

    ①日本看護協会で災害支援ナースの登録をしよう

     

    災害支援ナースになりたい人は日本看護協会に登録しなければならないですが、ある条件を満たす必要があり、具体的には
     

  • 看護師の実務経験が5年以上ある人
  • 所属している施設長の承諾を得ている人
  • 日本看護協会の会員の人
  • 災害支援ナース養成の研修を受けている人
  •  

    この4つが必須です。
     

    これらの条件をクリアし、在籍する施設の都道府県看護協会に登録することで初めて災害支援ナースとして認められます。
     

    やる気さえあれば誰にでもなれるものと考えていた人には、少し意外に感じたかもしれませんね。
     

    もし新人看護師さんが今すぐ災害支援ナースになりたいと思っても、5年の実務経験を積まないと登録すらできないので注意しなければいけません。
     

    災害支援ナースの仕事をする以上自分の責務を十分に果たさなければいけないため、焦らずまずはじっくりと看護技術を磨くのが重要です。
     

    公益社団法人 日本看護協会 災害看護

    ②災害支援ナースの研修内容について

     

    先ほどお話しした災害支援ナース登録の条件に「災害支援ナース養成の研修を受けている人」というものがありました。
     

    どのような研修が行われるかというと、
     

    1. ①12時間(2日間)のオンデマンド研修

    2. ②6時間(1日間)の集合研修

    3. ③12時間(2日間)の企画・指導者研修

     

    という流れで災害支援ナース育成プログラムは実施されています。
     

    結構しっかりとした研修が組まれており職場を休まなければいけないケースもでてくることから、働きながら災害支援ナースを目指す人は周囲の理解がないと受講は現実的ではありません。
     

    私の働いていた職場では月に2回までしか希望休を出せず、それ以上の休みの申請をしてしまうと先輩看護師にいろいろ言われました。
     

    職場の人と揉めないためにも、予め周囲の人に災害支援ナースになる意思を伝えておくとトラブルにならずに済みますよ。
     

    ちなみに災害支援ナースの登録には③は受けなくてもOKですが、災害支援ナースの指導者的立場になりたい人は③まで受講するのをおすすめします。
     

    ご自分がどのような災害支援ナースになりたいかで、受ける研修も変わってきますので一度じっくり考えてみてはどうでしょうか?
     

    ③登録後更新は何年ごとに行われる?

     

    看護師免許は一度取得すれば更新はない一方、災害支援ナースは定期的な更新が必要となります。
     

    登録した都道府県ごとに違いはあるものの2~3年ごとに更新が行われ、更新の際には研修を受けなければいけません。
     

    やはり災害支援ナースというほどですし、最先端の看護知識や災害時の対応を習得しておかないと現場で求められている役目をきちんと果たせませんよね。
     

    「更新とかあるなんて、少し面倒……。」という気持ちになる人もいると思いますが、
     

    災害支援ナースは絶望的な環境に置かれた人々の命を預かる重大な役割を担っている仕事ですから、被災者のためにも更新の研修を受け、知識や技術をアップデートするのが重要です。
     

    3.災害支援ナースの実際とは?

     

    災害支援ナースは実際にどのような仕事しているのか、3つのポイントにまとめてみました。
     

    ①派遣されたら何をするの?

     

    災害が発生すると、看護協会から災害支援ナースへ派遣要請の連絡がきて現地に派遣されますが、派遣時期は災害発生の3日~1ヶ月間・派遣日数は移動日も含めた3泊4日です。
     

    派遣日数は少ないものの「いきなり派遣されるんじゃ心の準備ができないよ!」と心配される人もいるかもしれません。
     

    もちろん災害後すぐに派遣されるわけではなく、派遣される前に派遣場所や活動内容・準備すべき物品などに関するオリエンテーションが行われるので安心してください。
     

    オリエンテーションのときにちゃんと話を聞いて心配事をひとつでもなくしておけば、自信を持って災害支援ナースの仕事ができますよ。
     

    ・所属している病院の許可が下りないと派遣先にいけないことも……

     

    災害支援ナースは、派遣要請されたらすぐに被災地に向かうわけではありません。
     

    多くの災害支援ナースは病院やクリニックなどの医療機関に所属しており、そこの所属長の許可が下りないと派遣先に行くことができないのが現実です。
     

    病棟は時期によってはカツカツの人員で仕事を回す状況もあるため、頼りになる看護師が4日間も留守にするとなると一大事ですよね。
     

    たしかにインフルやノロなどの感染症が流行る時期は、患者さんだけでなく看護師も発症してしまい、私の職場でも働ける看護師の数が不足しているのが当たり前でした。
     

    どの所属長も被災地の人々を助けたい思いがある反面、自分の病院の患者さんのケアも行わなければならない状況で苦しんでいます。
     

    このような事情があるのをきちんと理解し、もし派遣が許可されなくてもがっかりしたり所属長に怒ったりせず次の機会を待ってみてはどうでしょうか?
     

    ②災害支援ナースの身分保障ってなに?

     

    災害支援ナースは日本看護協会と都道府県看護協会により、1人あたり上限2万円交通費や宿泊費と、災害時の活動中の事故に対応できる保険などの身分保障が行われています。
     

    保険の適用は看護行為中の事故やケガ・被災地への行程中の事故などが該当するため、何かあっても安心です。
     

    災害活動に使うものは看護協会から用意されているとはいえ、ある程度のお金がなければ災害支援ナースとして働くのは難しく、経済的にあまり余裕のない方はためらってしまいますよね。
     

    実際は災害支援ナースの方が仕事に専念できるよう、看護協会はさまざまなサポートをしてくれているので、資金面が不安で踏み切れなかった看護師さんは、ぜひ災害支援ナースへの登録をしてみてください。
     

    公益社団法人 長野県看護協会 災害支援ナースの身分保障(傷害保険)

    ③派遣時に必要な持ち物とは?

     

    災害支援ナースが問題なく仕事ができるような物品は用意されているものの、手ぶらで現地に乗り込んで良いわけではありません。
     

    被災地では日常生活用品のすべては被災者の方のために用意されており、その数も限られています。
     

    「ご飯とかお水くらいもらえるだろう。」と思って何も準備せずに行ってしまうと、被災者の方の迷惑になってしまうので注意してくださいね。
     

    とはいっても、何を持っていけば良いのかわからない人もいると思います。
     

    具体的には、
     

    ・身分証明書
    ・保険証のコピー
    ・懐中電灯
    ・腕時計
    ・ホイッスル
    ・雨具・軍手
    ・マスク
    ・使い捨て手袋
    ・聴診器や血圧計などの診療時必要なもの
    ・着替え
    ・自分の食料と水分
    ・寝袋
    ・現金
     

    このようなものが必要ですが、仕事をする上で重要な物品と派遣されている期間問題なく生活できるようなものは何かをよく考え、すぐに出発できるように日頃から物品の準備をしておくのがポイントです。
     

    災害支援ナースになって被災者の心身のケアを行おう

     

    被災者の健康を守る災害支援ナースになるには、災害時の心構えや対処法などを学ぶ研修を受ける必要があるとわかりました。
     

    災害支援ナースは被災地の方々のケガや病気の治療を行うだけでなく、恐ろしい状況に遭われた人たちの心のケアを行うのも大事な役割となっています。
     

    そんな重大な仕事が自分にできるのか不安に感じる人もいると思いますが、苦しんでいる人のために何かしたいという思いやりに溢れた心があれば被災者を助けることができますよ。
     

    みなさんも災害支援ナースとして、慣れない生活や環境下で大変な思いをしている人の支えになってみてはどうでしょうか?
     

    過酷な環境に置かれている被災者の方たちを笑顔にできれば、この上ない喜びと充実感を感じられるはずです。