自分をより高めようとしている薬剤師が最近、とても増えています。
 

認定薬剤師などの資格を目指したり、習い事をして何かしらの資格を身に付けたりするなどほとんどの人が国内で努力していますが、中には海外の薬剤師になりたい・医療や文化において海外との違いを知りたいなどの理由で留学を希望する人も珍しくありません。
 

実際に留学するとなると、現在の仕事や外国での生活のことなど不安は尽きないと思います。
 

そんな気持ちを抱えながらも、彼らは海外のどのようなところに魅力を感じて留学に踏み切っているのでしょうか?
 

今回は海外の中でも人気のあるアメリカにスポットを当て日米の薬局の違いや留学の仕方などについて詳しくみていきます。
 

1.アメリカと日本の薬剤師の違い

 

職業は同じでもアメリカの薬剤師と日本の薬剤師には大きな違いがあります。
 

具体的な差を4つのポイントにまとめてみました。

①日本の薬剤師とはステータスが違う

 

日本の薬剤師がアメリカ薬剤師に魅力を感じる一番の理由は、ステータスの違いです。
 

薬剤師は医師よりも地位が下というイメージがある人も多いのではないでしょうか?
 

法律的には医師と対等ですし医薬分業も進んでいることも確かなのですが、社会的に医師の指示によって働いている認識がまだ強く、よほどのことがない限り医師の意見には逆らえないのが日本の薬剤師の現実です。
 

これに対してアメリカの薬剤師は医師とまったく対等で、患者様の安全を守るために医師に意見することもごく普通のことと考えられています。
 

薬剤師から電話がかかってくると、自分が何か間違えたのではないかと身構える医師までいるくらい一目を置かれた存在です。

・アメリカの薬剤師は人々からの信頼が厚い!

 

魅力的なステータスは医師と対等ということだけではありません。
 

国民からの信頼度においても日本とは大きく異なります。
 

医師のご機嫌をうかがうよりも薬の危険性から患者様を守ることを最優先に動いているからか、アメリカの薬剤師は信頼できる職業ランキングでなんと聖職者を抜いて第一位を獲得したことがあるほどの地位です。
 

宗教色の強い国において聖職者を抜いたという結果を見ても、アメリカの薬剤師は人々によほど信頼されていることが分かりますね。
 

これほど絶大な支持を受けているアメリカの薬剤師は、そのステータスに見合うだけの知識量と技術を持っていることも簡単に想像できると思います。
 

日本の薬剤師も患者様に信頼されていることは確かですが、信頼度のレベルや持っている知識の多さがアメリカの薬剤師とは格段に違うのです。
 

②アメリカの薬局の薬剤師は多くの患者様と話さない

 

日本の調剤薬局では来局したすべての患者様に薬剤師が飲み方を説明しますが、アメリカの薬局では質問のある患者様だけが薬剤師のいるカウンターで話をします。
 

何も質問のない人は、調剤補助をしているファーマシーテクニシャンと呼ばれる人のところに行き自分の名前を言って薬をもらうだけで、薬剤師と会うことはほとんどありません
 

「説明なんて必要ない!早くしろ」と怒鳴る患者様に萎縮してしまう薬剤師もいるので、私はこのシステムを見た時にとても良いアイデアだなと思いました。
 

患者様全員と話す必要がないため大きな薬局であっても薬剤師は2,3人しか勤務していないことも多いです。
 

「説明を聞きたくても遠慮して薬剤師のところに行けない患者様もいるのでは?」と心配する人もいると思いますが、そこはアメリカ。
 

基本的に他力本願ではなく自己主張をすることが求められる社会になっています。
 

このように文化的な背景も日本の薬局との違いを生み出している原因の一つかもしれません。

③アメリカの薬剤師は初任給が2倍以上!?

 

日本の薬剤師の初任給は年収450万前後と言われているのに対し、アメリカの薬剤師は新卒でも年収1000万円ほどあるのが普通です。
 

先ほど少しご紹介しましたように医師と同等の立場で仕事をしますし、かなりの知識とスキルを得て薬剤師になりますのでこの年収は当然と言えるのですが、2倍以上ということに驚かれた人も多いのではないでしょうか?
 

これだけお給料が違うのならアメリカの薬剤師になりたいと思う人がいるのもうなずけますね。

2.アメリカと日本の薬局の違い

 

アメリカと日本の調剤薬局の違いについて次に紹介します。
 

①薬局は自宅の近くに行くのが普通

 

最近はかかりつけ薬局をもつことを推奨されているため、自宅の近くの調剤薬局に行く患者様も増えてきたのですが、まだまだクリニックの門前の薬局に行く人がほとんどです。
 

アメリカでは病院にかかるとまず自宅近くの薬局がどこであるか受付で聞かれ、診察後は自動的にその薬局に処方箋が送信されるシステムですので、門前の薬局に行くことはまずないと思っていてください。
 

日本でも将来的にかかりつけ薬局という考えをより一般的にしたいのなら、医療機関側にこのようなシステム取り入れるなどの努力が必要と言えます。

②個人薬局が少ない!

 

普段私たちが街を歩いていると小さな個人薬局をたくさん見かけますし、大きな病院の前にはそのような調剤薬局が所狭しと立ち並んでいます。
 

これに対してアメリカでは個人薬局はほとんどなく、ドラッグストアが併設されているような大きな薬局が目立ち、病院の前に薬局はあまりありません。
 

車社会のため大きな駐車場のある薬局が生き残ったのかもしれませんが、アットホームな雰囲気を持つという理由から小さな薬局が人気の日本ではちょっと考えられないことです。
 

③粉の分包機がない?

 

全ての薬局において言えることではありませんが、少なくとも私はアメリカの薬局で粉の分包機を見たことがないです。
 

日本でそのような薬局はないに等しいと言っていいくらいなので驚いた人も多いでしょうし、「錠剤粉砕や脱カプセルでの調剤はいったいどうするの?」という疑問を持つ人もいると思います。
 

そのような調剤が必要な場合は、実は患者様自身や介護している人が粉砕や脱カプセルをすることも少なくありません。
 

あらゆることを手取り足取りやることが多い日本の調剤薬局とはまるで違いますよね。
 

アメリカのドラッグストアにはそのための簡易用の器具が薬局にも売られて、購入している高齢者もよく見られます。
 

日本人から見ると「やさしさに欠ける」という印象ですが、時間のかかる散剤分包や粉砕調剤をしない選択が患者様の待ち時間を減らす効果もありますので、どちらが親切かということを断定するのは難しいです。

④待ち時間がほとんどない

 

一般的に調剤薬局は待ち時間が長く患者様が怒鳴り始めてしまうことは本当によく起こりますが、アメリカの薬局では待ち時間がほとんどありません。
 

あるとしたらお会計を待っている時間だけといっても良いくらいです。
 

それだけ待ち時間を短縮できるのには、理由があります。

・待ち時間を減らせる理由とは?

 

前の項目でお話ししたように、薬剤師による説明をごく限られた患者様にだけ行うことや粉砕や散剤分包がないというのも待ち時間を減らす要素となっていますが、それ以外にも大きな理由があります。
 

日本では患者様が処方箋をもって調剤薬局に行くことから、処方箋の内容をパソコンで入力するときから調剤・監査が終え、薬の説明を受けるまで薬局で待っていなければいけません
 

それに対してアメリカの薬局では処方箋が薬局に自動送信されるため、パソコンでの入力の時間がまず省けるだけではなく、診察が終わった直後から薬局での調剤が可能です。
 

ここまででもかなりの時間短縮になると想像できると思いますが、さらに調剤が終わるとそのことを知らせるため薬局から自宅に電話がかかってきますので、薬局で待つことなく自宅で待機ができます。
 

自宅で待てるというのは病気を持つ患者様にとって非常に大きな利点です。
 

「一人一人の患者様に薬が出来上がったことを電話することは薬剤師の手間になるのでは?」という意見もあると思います。
 

確かに薬剤師がかけるとしたらかなりの負担になりますが、この電話というのは人がかけているのではなく、コンピュータを使って電話に音声のみのレコーダーが流れるようになっているので電話連絡にコストはかかりません。
 

このような点もアメリカの薬局らしい合理的な方法と言えますね。

⑤お薬手帳なんて存在しない

 

相互作用や過去の処方歴を見るために日本ではお薬手帳を利用しています。
 

一見便利に見えるこのお薬手帳、実はいろいろな問題があることに薄々気づいている薬剤師も少なくありません。
 

一番の問題点はお薬手帳自体を持参し忘れてしまう患者様が多いことです。
 

忘れてしまっても後で貼れるようにシールをお渡ししますが、シールを貼ることさえ忘れてしまうこともよくあり、処方歴を完全に管理することが難しくなっています。
 

それに対してアメリカでは処方歴をソーシャルセキュリティーで管理していますので、お薬手帳というもの自体が存在していません。
 

データが自動的に入力されることによって情報が抜ける心配もありませんし、いちいち手帳を持参しなくても良いことも利点の一つです。
 

日本もマイナンバー制度がより浸透されるようになると、将来的にお薬手帳がなくなる可能性もあります。
 

もしそうなれば処方歴を管理することが容易になりますし、お薬手帳や手帳に貼るシールを大量に発行する必要もなくなりますので、資源の無駄を改善することも期待できるのではないでしょうか?

3.薬剤師のためのアメリカ留学

 

ここまでアメリカと日本の薬剤師・薬局の違いを見てきましたが、アメリカの医療の世界で実際に働いてみたい・これらの違いを実際に見てみたいといった場合にはやはりアメリカ留学をを考えると思います。
 

実際にどのような留学があるのか例を2つ挙げてみました。

①アメリカの薬剤師になるための留学

 

日本の薬剤師がアメリカの薬剤師になるには、試験を受けて薬剤師資格試験とインターン資格を取得する方法とアメリカの専門大学院過程で勉強する方法の2つがあります。
 

・試験を受けて薬剤師資格試験とインターン資格を取得する方法

 

FPGEE(Foreign Pharmacy Graduate Equivalency)と呼ばれる試験とTOEFL、TSEという英語の試験に合格して薬剤師資格試験とインターン資格を取得する方法です。
 

学校に行く必要がないので費用があまりかからないことが利点なのですが、日本人には取得の難しいビジネスビザが必要になることがネックとなり、この方法をあきらめる薬剤師もいます。
 

アメリカ人との結婚やくじへの当せんでグリーンカードを得た人、H1Bビザのスポンサーになってくれるアメリカの企業がある人は目指してみても良いかもしれません。
 

ただし2003年の1月以降に薬学部を卒業した人は、最低5年間の薬学部カリキュラムを修了していないと薬剤師資格試験とインターン資格を与えられないという規定があります。
 

2011年までは日本の薬学部は4年制でしたので、2003年から2011年に卒業した人はこの方法を選択できないことはおさえておいてくださいね。

・専門大学院過程で勉強する方法

 

この方法を選択をすればF1ビザを取得しインターンが可能なことから、ビジネスビザ取得に苦労する必要がありません。
 

ビジネスビザがネックな人にとってはあいがたい方法ではあるものの、時間と高額な学費がかかります。
 

時間は日本の大学で習得した単位をトランスファーできれば多少短縮はできますが、単位移行を認めている学校自体がとても少ないため、トランスファーをあきらめる学生も少なくありません。
 

学費は年間400万円以上かかると思っていて間違いないですし、海外で学ぶとなると生活費もかかりますので、日本で薬剤師をしながら英語を勉強しつつかなりの額を貯金することを先に考えたほうが賢明です。

②語学を習得するための留学

 

アメリカの薬剤師になるのにはハードルが高いけれど、アメリカに行って文化や医療分野の違いを見てみたい人には語学留学もおすすめです。
 

費用は大学院に行くほどかかりませんし、期間も自分で決められます。
 

英語を習得することで海外からの患者様の服薬指導に役立てることもできるなど、国際社会においてのステップアップも期待できますよ。

留学して得られるもの

 

今回は日米の薬局を比較し、薬剤師の留学について考えてきました。
 

外国の薬剤師になる場合も語学を学び日本で役立てる場合も、留学することで見聞を広められ、それがスキルアップにつながることが分かったと思います。
 

日本社会にいると日本の常識が世界でも通じると思ってしまいがちですが、外国に行くとそうでないことを実感します。
 

外国での新鮮な体験ができる点でも、留学経験は医療人としての成長につながるのではないでしょうか?
 

海外に行って生活をするのはとても大きな勇気がいる一方で、得られるものもまた大きいというのも確かです。
 

ぜひ留学を経験して薬剤師として一回りも二回りも大きくなってくださいね。