治験で薬を投与したあと、検査値などのデータを管理・解析する業務があります。
 

この業務はDMという職種が担当していますが、「臨床試験になぜデータ解析が必要なの?」 と疑問を持つ人も中にはいるかもしれません。
 

実は試験や研究において結果を出したい時にデータ解析はとても重要な役割を果たしており、治験によって得られた検査値や症状の情報は、解析をして初めてそれが薬による効果・副作用かどうかが分かる場合がほとんどです。
 

データ解析は臨床試験に不可欠と言っていいほど大事な仕事である一方、DMについてよく分からないという人も多いのではないでしょうか?
 

今回はそんなDM(統計解析)の仕事内容や必要な知識などについて詳しく見ていきます。
 

1.DM・統計解析業務の仕事とは?

 

DMとは「Data Management」の略で、治験の検査データなどの統計解析が主な仕事です。
 

具体的な仕事としては、症例報告書から得たデータの
 

  • データベースへのエントリー
  • 調整
  • 確認
  • 修正
  • 固定
  • 解析
  •  

    などが挙げられます。
     

    どのプロセスでもできるだけデータを慎重に取り扱い、いかにミスをなくせるかがDMに求められるスキルです。
     

    ①データベースへのエントリー

     

    CRA(臨床開発モニター)が症例報告書を回収してきたらDMの出番です。
     

    受け取ったデータをデータベースに入力する作業から始めていきますが、アルバイトや内職によくある業務であることから、簡単で気軽な作業というイメージを持っている人もいると思います。
     

    治験の場合はこのデータベースを基に新薬の効果や副作用を解析していくため間違えが許されません
     

    薬局調剤・監査業務もミスができない作業ですので、どれほど神経を使いストレスがかかるものなのかは薬剤師なら想像できますよね。
     

    薬局では万が一ミスをしても大丈夫なようにダブルチェックするなどの対策を立てていますが、DMの業務でも同じように2人の人が同じ内容を入力するダブルエントリーという方法を使って入力ミスをしないよう努力をしています。
     

    いくら間違えないように注意していても、その日の体の調子によってはミスしてしまう場合がありますから、2人でチェックする方式が非常に重要だということは押さえておいてください。
     

    ②データの調整

     

    データの調整とは具体的にコーディングをすることを指すものの、「コーディング」という言葉は多くの薬剤師にとって聞き慣れないものかもしれません。
     

    コーディングとはコードの割り当てという意味で、数値として解析ができないものに特定のコードを付けることで、検索や解析をしやすくする作業です。
     

    私たち薬剤師は薬歴などによる患者様の情報を何気なく記載していますが、治験の場合には、まず最初に情報を解析できる形に整える作業から始めることに驚いた人も多いのではないでしょうか?
     

    症例報告書には、
     

    • 既往歴
    • 併用薬
    • 有害事象

     

    などの情報が記載されています。
     

    これらの中にはコーディングが必要なデータが多いうえに、患者様が訴える内容なども一つ一つデータ化することを考えると、非常に手間のかかる大変な業務であると分かりますね。
     

    どんなに小さな情報も大切にしてデータとして取り扱えるように努力をしているのがDMの仕事です。
     

    ③データの確認

     

    これはデータが間違っていないか確認する作業で、ロジカルチェックやマニュアルチェックといった方法があります。
     

    ロジカルチェックはたとえば生年月日が3000年生まれになっていたり、検査値が一桁違っていたりなど論理的にあり得ないデータをコンピュータで見つけ出す確認法で、
     

    マニュアルチェックは傷病名と服用薬に矛盾がないかや検査値が基準に合っているかなどを人の目で確認するものです。
     

    データをカルテから転記するときはCRC(治験コーディネーター)が慎重に症例報告書に記載しているはずですから、「そんなにケアレスミスがあるものなの?」と疑問を持つ人もいると思いますが、いくら気を付けていても記載ミスは避けられません
     

    特に最近は紙の症例報告書は少なくなり、電子媒体をつかった報告書(EDC)でパソコンを使っての入力が主流になったせいか、ちょっとした打ち間違いで数値のミスが起こりやすくなってきました。
     

    手で書く手紙よりもメールのほうが誤字脱字が多くなるのが一般的で、それと同じことが症例報告書でも起こってしまうことがあると思ってください。
     

    今後もEDCが普及されていくでしょうから、正確にデータをチェックをするスキルを磨いておくと活躍の場が広がりますよ。
     

    ④データの修正

     

    チェックして納得ができないデータが見つかると次はデータの修正に移りますが、DMは修正の必要があるデータをクエリーとしてまとめてCRAに確認をお願いする作業に入ります。
     

    CRCとして働いていたことがある人は、症例報告書が出来上がって安心していても、あとあと再度確認や修正をしなければならなかった経験があるのではないでしょうか?
     

    これはDMからのクエリーが元になっているというのが理由であるものの、その事実を知らずただひたすらCRAとの修正作業に集中するCRCもいるかもしれませんね。
     

    治験のデータをより完全なものにするために、治験に関わるさまざまな職種の人たちが力を合わせて業務を行っているのです。
     

    ⑤データの固定

     

    修正が終わりデータが完全な状態になった状態をデータの固定といい、ようやくDMがホッとひと息つける瞬間です。
     

    この固定作業が完了してやっと統計解析部門にデータベースを引き渡すことができます。
     

    ⑥データの解析

     

    データ解析は統計学を使って出そろったデータ解析していく仕事で、起こった効果が治験薬によるものなのかどうか、有害事象と治験薬の因果関係などを統計解析をして分析していきます。
     

    私がCRCとして働いていたころ、臨床試験の結果を見て検査値が良くなっていたりすると「治験薬の効果かもしれない」と喜んでしまったことが頻繁にありました。
     

    患者様の症状が良くなったのはてっきり自分の担当した薬のおかげかと思い込んでいましたが、いざ実際に統計解析をしてみると治験薬とは全く関係なく、
     

    他の要因が原因であったり有意差があまりなかったりという結果になることも多かったため、ショックを受けたことも多かったです。
     

    人間の思い込みや偏見を取り除いて評価するためにも、DMの解析作業では数学的に分析することがとても重要になってくることを覚えておいてくださいね。
     

    2.DM・統計解析業務の気になる年収は?

     

    DM・統計解析業務の年収を調べたところ400万円~700万円と金額にけっこう幅がありました。
     

    一般的に企業は実力主義の傾向がありますが、DMの場合も経験年数や実力しだいで出世・昇給も夢ではありません。
     

    頑張った努力がお給料に反映されるのはとても嬉しいですし、今後も会社のために頑張ろうというモチベーションにつながりますよね。
     

    会社によっては薬剤師の資格手当がつくこともあり、高収入を望めるケースはあるものの、繁忙期でなければ残業がなかなか発生しないことから、残業手当で稼ぐことはあまり期待できないのが実際のところです。
     

    残業をバリバリこなして稼いでいきたいと考えている人には不向きな一方、家庭との両立やスキルアップの時間を確保したいという人にとっては、残業が普段ないことを自分の時間が持てる利点として捉えることができます。
     

    今までの経験を活かし。統計解析のスキルの高さで勝負したい薬剤師にとってはこの上なく条件の良い職種ですので、少しでも気になった方はDMへの転職を検討してみてはどうでしょうか?
     

    3.DM・統計解析業務に求められる知識

     

    データを扱うこれらの職種に求められる知識は主に、
     

    • 数学的な知識
    • 薬学的な知識
    • 英語力


     

    の3つがあります。
     

    薬学的な知識だけでなく数学・英語の知識も、業務をこなしていく上でそれなりのウエイトを占めている点に注目です。
     

    ①数学的な知識

     

    正確には統計学の知識のことで、データを解析するためには統計解析の知識や数学的な考え方が欠かせません。
     

    大学の薬学部で統計学の講義があるとはいえ、実は時間的にはとても少なく、ただ授業を受けただけではプロフェッショナルにはなれないというのが現実です。
     

    統計学を習ったけれど、もう何を勉強したか忘れてしまった薬剤師もきっと多いと思いますが、このような状況で統計解析を極めるとしたら、数学に興味を持って自ら勉強していく意欲がとても大切になってきます。
     

    中には「薬剤師はもともと理系だから、統計学くらい簡単に学ぶことができるでしょ?」と思う人もいるかもしれませんね。
     

    たしかに薬剤師は理科系に分類されるものの、数学というより化学が専門分野で、実は数学が苦手という薬剤師も割と多いですし、統計解析スキルをのばす一番の素質は数学への関心の強さですので、DMは数学が得意な人(好きな人)に向いている職業と言えます。
     

    ②薬学的な知識

     

    データ管理や統計解析になぜ薬学の知識が必要なのか不思議に感じる人もいると思います。
     

    たとえば罹病歴と併用薬が全く合っていないデータがあったとしても、薬学的な知識を持った人でなければ間違っていることをすぐに見抜けません。
     

    薬学のことを知らない人はこのミスに気づけないですし、毎回一つ一つ調べることになっては効率よく仕事ができませんよね。
     

    治験は新薬を開発するための試験ですから、さまざまな面で薬学の知識を持っている薬剤師が採用されやすいのもポイントです。
     

    ③英語力

     

    治験はどんどんグローバル化されていて、英語の読み書きのスキルが必須になってきていることから、DM・データ解析の仕事に限らず治験に関わる仕事には英語力が不可欠です。
     

    今後もグローバル化がより進み、海外からのたくさんのデータを取り扱っていくのは確実と言ってもいいほどですので、治験に携わりたい人は仕事をスムーズに行うためにも、英語力をつけることまず考えてみてはどうでしょうか?
     

    実際に働いている人の中には、英語の必要性を肌で感じて英会話を習ったり、語学留学をしたりして自ら英語力をアップする努力をしている方も多いですし、
     

    勤務時間外を使って努力することはとても大変ですが、英語力をつけることは、実力主義の企業において自分の能力を認めてもらうきっかけにもなりますよ。
     

    4.DM・統計解析業務への転職

     

    DM・統計解析の職種の求人が一般に出ることはとても少ないので、転職活動を始める際には薬剤師専門の転職エージェントの活用をおすすめします。
     

    ①募集が出るタイミングで非公開求人を紹介してもらえる

     

    転職エージェントは一般に公開していない非公開求人と呼ばれるものを持っており、その中からも求人検索をしてくれるため、自分一人では見つからない求人にも応募できます。
     

    DMや統計解析の仕事は忙しい時期に波がある上、会社によって忙しさの度合いも違いますから、募集が出るタイミングを見極めなければなりません。
     

    時間的にも経済的にも余裕があるという人は別ですが、働きながらだったり家庭との両立を考えていたりする場合だと、個人で見極めるのはなかなか難しいですよね。
     

    その点エージェントは転職のプロですし、募集があったときはすぐに知らせてくれるので、チャンスを逃さない転職活動をするための心強い存在です。
     

    ②履歴書や面接においての対策をしてくれる

     

    転職エージェントを活用する他の利点として、履歴書の書き方や面接での質問対策をしてくれることが挙げられます。
     

    企業への就職を希望するときに面接はとても重要な判断材料になる一方、大勢の面接官の前だと緊張して普段の自分を出せないことがあるのではないでしょうか?
     

    そんなときにあらかじめ質問対策をしてくれると緊張感が薄れ、落ち着いて質問に答えることができますから、面接官への印象も良くなること間違いありません。
     

    ③転職エージェントにはあらかじめ希望を伝えておこう

     

    「DM募集」と書いてあっても仕事内容が全ての会社で同じわけではありませんので、転職活動で応募する会社を選ぶ際は、エージェントに内部の詳しい事情を聞いておくのも転職を成功させるポイントです。
     

    入職してから後悔しないように、あらかじめDMとしてどのような仕事をしたいのか・どんなふうに薬剤師の知識を生かしたいのかなどの希望を伝えておいてください。
     

    エージェントは私たちの思いを聞いて条件の合う求人を検索してもらえますし、過去にDMに転職した例を取り上げてアドバイスもしてくれます。
     

    エージェントは無料で活用できますから、転職するか迷っている人も気軽に相談してみるといいですよ。
     

    高度な知識で患者様に貢献を

     

    今回はDM・統計解析業務について詳しく見てきました。
     

    この職業は薬学や数学・英語のスキル全てを使って患者様に貢献できる数少ない仕事の一つです。
     

    患者様に対面で感謝されることはありませんが、他の人が持っていない能力を患者様のために生かせることから、大きな誇りを持って勤務している薬剤師も少なくありません
     

    薬局などの医療機関とは違って企業勤務なら土日休みをもらえますし、実力アップによっては昇給も期待できます。
     

    みなさんの中に数学好きで調剤とは別の仕事で患者様に貢献してみたい薬剤師の方がいましたら、ぜひ挑戦してみてくださいね。
     

    DM・統計解析の部門で成長し、培ったスキルを患者様のために発揮できることを祈っています。