大学の薬学部を卒業してすぐ製薬会社などの企業に就職した人は、たとえ薬剤師の資格を持っていたとしても調剤経験がない人がほとんどなのではないでしょうか?
 

資格を持ちながらも薬剤師の業務をしたことがないということで、彼らは自分たちのことをペーパー薬剤師と呼んでいます。
 

定年まで企業に勤めればペーパー薬剤師でも問題はありませんが、様々な理由で調剤業務に携わりたいと転職を希望する薬剤師は、調剤未経験なことから就職の厳しさを目の当たりにする人も少なくありません。
 

今回は調剤経験がない薬剤師はなぜ転職が難しいのかやどんな理由で転職するのかを踏まえた上で、転職をスムーズにする方法を探っていきます。
 

1.調剤未経験者の転職が難しい理由とは?

 

どんな仕事でも未経験分野での就職は難しい傾向がありますが、調剤に携わる薬剤師も例外ではありません。
 

一般的に薬剤師というと、求人広告を見ても分かるとおり人手不足で常に募集があります。
 

薬剤師は国家資格さえ持っていれば就職自体はできるので、求人の多さからみてもいつでも好きなタイミングで転職できそうですよね。
 

たしかに調剤経験がある薬剤師は比較的転職が簡単なのですが、未経験の場合には資格があっても転職できないということがよく起こります。
 

薬剤師はミスが許されない仕事ですから実務経験のないペーパー薬剤師は敬遠されがちなのが現状です。

4年制を卒業した薬剤師は特に転職が難しい!

 

現在薬学部は6年制になり病院実習や薬局実習が充実するようになりましたので、新卒でも即戦力として調剤業務をすることができるようになりましたが、4年制のときは卒業した後勤務先の医療機関において一から調剤を覚えることが一般的でした。
 

6年生と違い調剤の実習が必須ではないため、4年生の場合卒業後すぐに企業に勤めることもできます。
 

薬学部を卒業したものの調剤経験がないまま企業へ就職した薬剤師は、調剤が必要な現場に改めて転職するとなると、そこで一から学ばなければなりません。
 

社会人になって数年経つ人に調剤を最初から教えるなら、ある程度戦力になる若い薬剤師を採用したいと考えるのは自然ですし、同じ年代の薬剤師なら調剤に慣れている薬剤師のほうが安心して仕事を任せられますよね。
 

4年制を卒業した薬剤師に言わせると「即戦力になれる教育を受けてないのは私たちのせいではないのに不公平だ!」というのが本音だと思いますが、医療機関側の立場に立って現実的に考えると経験者を募集したい気持ちが見えてくるのではないでしょうか?
 

薬剤師の仕事は現場主義的な面が強く、単に資格さえもっていればそれで済むというわけではないことも押さえておいてください。

2.調剤未経験者が調剤業務に携わりたいと思う理由とは?

 

企業で働いていた薬剤師が、なぜ調剤業務をしてみたいと思うのか志望動機として考えられる理由を4つ挙げてみました。
 

①全国で働ける

 

企業で働いていると、配偶者の都合で転勤になった場合など退職しなければいけならず、しばらくは主婦をしなければならないことも出てくると思いますが、調剤薬局やドラッグストアは全国にありますので引っ越しをしても就職に困らない利点があります。
 

多くの薬剤師は自分の仕事に誇りをもっていますから、引っ越しをしたせいで仕事がなくなってしまうと、自分の存在意義が分からなくなるアイデンティティクライシスという問題を抱えてしまう人も少なくありません。
 

アイデンティティクライシスに悩み続けるとうつ病などの心の病を発症する可能性も高くなりますので、これは切実な健康上の問題です。
 

経済面だけでなく精神面のバランスを考えても、どこへ行っても就職に困らない環境は大きな安心感につながりますね。
 

結婚を機に調剤業務を学んでいつ引っ越してもいいように準備する薬剤師も多いです。

②派遣で働ける

 

最近、習い事や資格取得など仕事以外に生きがいを持っている薬剤師を多く見かけます。
 

中には海外留学や国境なき医師団での活動などグローバルな人生を歩んでいる人もおり、彼らの多くは日本へ帰国した時にだけ薬剤師として働けるようにと派遣社員として登録しています。
 

パートではなく派遣を選ぶことに疑問をもつ人もいると思いますが、派遣ほど留学と相性の良い雇用形態はありません
 

というのも、派遣社員は働く際の面接がないため海外にいながらの修飾活動が可能ですし、たくさんの薬局で派遣薬剤師を募集しているため就職口が見つけやすいからです。
 

一度派遣社員として登録しておけばいつでも働ける環境ができるので、留学をしつつも薬剤師の資格を最大限に活かせますね。
 

派遣は期間限定で薬局の戦力になることが求められますから、薬剤師が派遣を希望する場合、できる限り調剤経験をしておくのがポイントです。
 

派遣薬剤師に関して詳しく知っておきたいという方はこちらの記事に書いてありますので、一度目を通してみてください。

⇒【意外と知らない!派遣薬剤師の業務内容やメリットとは?

・一時的な帰国でも働ける?薬剤師ならではのメリット

 

一般的な職業の場合、帰国したからといってすぐに働けるわけではありません。
 

働くためには再び求人探しを始める必要が出てきますが、派遣薬剤師なら一時的な帰国でも就職口が簡単に見つかります
 

留学などで長期に海外に行く場合には仕事を辞めてから行かなければならないことがほとんどですので、帰国した時に再就職できるかが不安で留学を躊躇してしまう人も実際多いのではないでしょうか?
 

社会人になったあと語学留学をしている人のほとんどは、いつでも就職できる薬剤師か看護師という事実もあります。
 

せっかく薬剤師の資格を取ったのですから、こういった形で活かせると今後のライフプランにも幅が広がってきますよ。

③定年後も働ける

 

企業において定年の年齢は決まっていても、調剤薬局などでは決まっていない場合があります。
 

調剤薬局は人手不足のこともあり、調剤のベテランであれば退職せずにこのまま働いてほしいところがとても多いため、定年後も働きたい薬剤師が薬局への転職を望むことも珍しくありません。
 

ここで大事になるのは、ベテランであればという点です。
 

「定年後も働いてください」と頼まれるのはあくまでも戦力になれるベテランの薬剤師ですので、企業を定年した後に新人薬剤師として薬局に転職することは正直難しいことはおさえておいてください。
 

基本的に定年後の薬剤師を雇いたいと思っている薬局は、人手不足で困っているか患者様が大勢来る非常に忙しい薬局ですから、未経験の薬剤師に教えている暇がなく調剤が早くできるベテランだけを取り入れるとは自然な流れですよね。
 

定年後も戦力として働けるように企業を早期退職して調剤を学ぶ人も実際に増えています。

④パートでも給料がある程度高い

 

薬局のパートの時給の平均は2000円ですから一般の職業とくらべるとかなり良いお給料がもらえます。
 

空いている時間にパートで仕事をしてある程度高いお給料を得られることは、主婦の薬剤師にとって嬉しいポイントです。
 

働くことで家計の足しになるだけでなく欲しいものが好きなように買えますし、一般的なパートでは稼ぐのにそれなりの時間がかかりますが、時給が高い薬剤師なら短時間働くだけでも簡単に達成できますね。
 

薬局への転職を希望する薬剤師の中で特に家庭を持っている調剤未経験の方が非常に多くみられるのは、時給の高さも大きな理由の一つと言えます。

3.調剤未経験の薬剤師の転職をスムーズにする方法とは?

 

ここまでは調剤をしたことがない薬剤師の転職事情や理由について見てきましたが、実際に転職活動をしていくうえでのポイントを次に紹介していきます。

①大きな総合病院を狙う

 

学生実習を受け入れている大きな総合病院は研修制度がしっかりしていることが多く、未経験者の教育に慣れている傾向があります。
 

数々の薬剤師を育ててきた実績もあり、教育スケジュールも綿密に組まれていますので、調剤経験のない薬剤師でもまったく心配はいりません。
 

こう聞くと都合が良すぎるように思われるかもしれませんが、もちろん気を付けなければいけないこともあります。
 

それは、正社員や契約社員として入職するという点です。
 

病院にもよりますが、期間限定の派遣薬剤師やパート薬剤師は教育する必要ないと考える薬剤部もあり、投薬業務や錠剤のピッキングだけお願いし他のことは教えないところが実際に存在しています。
 

研修環境が整っていない職場に勤務してしまうと、調剤に携わる薬剤師として成長することは期待できなくなってしまいますので、パートなどで入職する際には業務内容をしっかり確認してくださいね。

・研修生という選択肢も

 

教育プロづラムを持っている病院の中には、給与なしで研修生として受け入れているところもあります。
 

賃金が発生しないことから病院の方針も教育に特化されている面があり、研修制度もかなり整っていることが多いです。
 

お給料はもらえませんが無料で学ぶことができると考えると、とても価値があるかもしれません。
 

今お金には困っていないけど調剤技術をいち早く高めたいと思っている薬剤師の方は、研修生を検討してみてはどうでしょうか?

②研修制度のある調剤薬局やドラッグストアを狙う

 

未経験で調剤薬局で働きたい場合には、求人検索の際に「未経験者歓迎」や「研修制度あり」という募集を探してみてください。
 

このキーワードがない薬局は新人に教えている暇がないくらい忙しいことが多かったり、人手不足で教育する人がいなかったりする場合が考えられるためあまりおすすめできません。
 

一から調剤業務を学ばなければならないということは最初は手取り足取り先輩薬剤師に教育してもらうことが必要です。
 

調剤業務だけでなく保険点数についても勉強することになりますから、分からないところをいつでも質問できる人がいる職場を見つけてみてください。
 

教えてくれる人がいない薬局に勤めてしまうと周りに迷惑をかけてしまうだけでなく、自分自身もなかなか戦力になれずストレスが溜まりがちですが、新人の教育環境が整った環境に勤務できるとスムーズに学ぶことができて思ったより早く一人前になれますよ。

③自分で勉強することも大事

 

転職活動時に新人教育をしてくれる職場を探すのと同じように、就職後に自ら勉強する姿勢もとても重要です。
 

薬剤師業務はかなり多くの種類がありますし、学ばなければいけない知識も膨大ですから人に教わるだけではすべてを網羅できません。
 

医学・薬学は日々進化をしていて新薬も続々と発売されますので、薬剤師は常に勉強するのが必須な職業と言え、未経験者でも遅れをとらないようにきちんとした研修制度を取り入れている病院が多いのもわかりますね。
 

どのように勉強したらよいのか迷ってしまう人もいると思いますが、勉強会に積極的に参加したり講習を受けたりするなど自分自身の一つ一つの努力が大きな力になることは知っておいてもらいたいです。

4.何歳まで未経験での転職が可能ですか?

 

何歳まで未経験で転職できるのかはとても気になるかもしれませんが、会社にもよるというのが実際のところです。
 

例えば病院では20代限定のところが見られるのに対し、人手不足の薬局やドラッグストアでは年齢不問で雇用してくれる職場もあります。
 

確かに若ければ若いほど転職は簡単なことは間違いありませんが、転職先で今までの社会経験を評価してもらえる場合も珍しくありません
 

年齢が高くなると未経験では働けないのではないかと不安になる人もいると思いますが、そのような求人だけではないことは知っておいてくださいね。

5.未経験での転職をする際はエージェントに相談を

 

未経験での転職活動をする際にまず思いつく方法としては、ネットの求人検索サイトで未経験可にチェックを付け探してみたり、ハローワークで求人を一つ一つ探したりすることが挙げられます。
 

たしかにこのような探し方で見つかることもありますが、より自分に合った就職先を見つけるための有効な手段として転職エージェントを利用するのも一つの手です。
 

エージェントに登録をすると担当者が薬剤師の希望を聞き、それに合った求人を検索してくれるうえ、非公開求人の中からも探してくれますので自分で探すより選択肢はかなり広がります
 

転職エージェントを利用する利点はそれだけではありません。
 

たとえば「未経験可」の文字が求人に書かれていなくても、担当者が求人先に直接コンタクトを取り研修できるどうか聞き取りをすることで、相手先からOKをもらえることがあります。
 

ほかにもエージェントが今まで積み重ねてきた社会経験を売り込んでくれた結果、医療機関側から「ぜひ雇用したいです」と言ってもらえた例も実際ありますよ。
 

自分で転職活動をしていてはこのようなことは期待できませんので、転職に失敗しないためにもぜひ転職エージェントの助けを借りてみてはどうでしょうか?

誰でも最初は未経験

 

今回は未経験の薬剤師の転職について詳しくみてきました。
 

経験がない人が希望のところに転職するのはやはり大変で、不採用になると落ち込んだり不安になったりすることもあるかもしれません。
 

一つ言えるのは、未経験の転職にはタイミングも大事だということです。
 

不採用通知をもらい続けていてもタイミングさえ合えばすんなり就職できることもありますか、あきらめずに活動を続けることが転職を成功させる秘訣と言えます。
 

資格なしの一般の転職と比べると、薬剤師はたとえ未経験でも転職しやすいです。
 

エージェントと相談しながら希望に近い転職先を見つけ、調剤に携わる薬剤師として大きく成長してくださいね。