病院や薬局に薬剤師として勤務するにあたり、正社員ではなくパートとして勤務するという選択肢があります。
 

パートを選ぶ理由は人によって違いますが、
 

  • 結婚や出産でライフスタイルが変化した
  • 自分の時間を増やしたい
  • 体調の問題で勤務時間を制限したい

などさまざまです。
 

時間的に余裕があるせいか、正社員よりも楽に働けると思っている人も多いのではないでしょうか?
 

正社員という重荷を背負わずに自分の時間とスキルを活かせるのはメリットですが、
 

パート薬剤師だからこその悩みを抱えることもあるのです。
 

ここではパート薬剤師と正社員との違い、そしてその違いによってどのような悩みを抱えているについてご紹介していきます。
 

1.パート薬剤師の業務内容は正社員と何が違う?

 

パートとして勤務する場合の業務内容は、勤務する医療機関によります。
 

期間を決めずに長期で就職する場合と期間限定で短期で就職する場合によって、業務内容が違うことが多いです。

①長期に勤務する場合

 

薬剤師として一時的ではなく長期間勤務する場合は、正社員で働く薬剤師と同じ業務内容であることが一般的です。
 

入職すると同時に薬局の業務内容を正社員と同じように教育され、
 

  • 調剤
  • 監査
  • 投薬
  • 薬歴の記入

など全ての業務に携わります。
 

一日の勤務時間や週の出勤日数が正社員と違うだけなので、正社員として働いているのと大差はないと感じるかもしれません。

②短期で勤務する場合

 

例えば、「正社員の一人が産休や介護で長期に休暇を取るのでその間だけパートで勤めてほしい」という求人を時々見ますが、その場合は短期でのパート勤務ということになります。
 

期間はだいたい半年や1年といった場合がほとんどです。
 

みなさんの中には、短期での就職だからといって一般の薬剤師(正社員や期間限定ではないパート職員)と同じような業務内容だと思っている方もいるのではないでしょうか?
 

実際その前提で就職してしまうケースも多いのですが、実は短期で勤務する場合は業務内容に違いがでてくることも少なくありません。
 

<例>介護休暇をとっている薬剤師の代理としての短期でのパート勤務…Aさんの場合

 

職場は総合病院の薬剤部で勤務期間は半年という契約でした。
 

Aさんは他の病院で薬剤師をされていた経験があるのでそれを役立てたいと入職したのですが、実際に勤務してみると、錠剤の調剤だけを一日中頼まれたそうです。
 

正社員として働いている薬剤師たちが期間限定の薬剤師に一番望んでいたことは、とにかく効率的に働いてもらいたいということでした。
 

いくら薬剤部内の全ての業務内容を教え込んでも、半年後・一年後に辞めてしまうなら一つか二つの業務のみを教えて、ひたすらそれを集中してやってもらいたいと思っていたようです。

 

この例では、「短期雇用の薬剤師は一人前の薬剤師として使えない、一時的なお手伝い」として認識されています。
 

Aさんの場合は錠剤の調剤でしたが、薬局によっては投薬業務・薬歴の記載だけを一日頼まれることもあります。
 

これらは薬局の規則である調剤内規を覚えなくても、薬剤師の経験のみでほとんどできてしまう業務ですので、どちらかというとこちらを頼む薬局の方が多いです。
 

いずれにせよ、同じ業務を長時間行うことに抵抗がある方や薬局の業務をきちんと覚えたいという方は、面接できちんと業務内容を確認した方が良いと言えます。
 

事前に詳しく聞いておくことで、この職場でパートとして働いて大丈夫なのかどうか、後悔のない選択ができますよ。

2.パート薬剤師の待遇は?お給料・保証について

 

パート薬剤師として働くにあたって、給料が正社員とどれくらい違ってくるのか気になる人も多いと思います。

①給与は正社員と変わらない場合もある?

 

給与についてはご存知のとおり、時給での支給となります。ボーナスはないところがほとんどです。
 

保険薬局は一時間2000円くらいが相場で、経験などで加算されます。
 

地方の薬局になりますと、薬剤師が少ないという理由で時給は都心よりも高い傾向にあり、病院薬剤師の時給は保険薬局に比べて下がるのが現状です。
 

「やっぱりパートだと、正社員と比べてもらえるお給料は少ないですよね……?」
 

と思う人もいるかもしれません。
 

薬剤師は一般の職業よりも時給が高めのため、勤務時間の長さによっては、実は正社員と変わらない金額の給与を得ているパート薬剤師も多いのです。
 

昇給に関しても、年に数十円といった少ない金額でも昇給がある会社がほとんどですが、中には実力主義を掲げている薬局もあり、実力が認められることで200円・300円という単位での昇給がもあり得るので、職場の探し方によっては高給も期待できますね。

②残業は薬局によって違う

 

パートは「時間で働いている」ことが前提になりますので、残業をすれば基本的に残業手当が発生します。
 

パート職員には残業は頼まないといった薬局もありますし、忙しい時にだけ頼むといった薬局、正社員と同じように最後まで残業するといった薬局もありさまざまです。

③パートだと特別休暇はもらえない?

 

勤務日数・時間に寄りますが有休休暇がもらえるのが普通です。何日もらえるのか・いつごろもらえるのかは職場によりますので、職場で確認をしてください。
 

ただ、正社員と違い
 

  • 産休
  • 育休
  • 介護休暇

 

はもらえないことがほとんどです。

④社会保険は加入条件の確認が大切

 

厚生年金・健康保険には、一週間の所定労働日数と一か月の所定労働日数が正社員の4分の3以上勤務すれば一般的には加入できます。
 

また平成28年10月から「従業員501人以上の会社で雇用見込みが1年以上ある」などの条件を満たせば、週20時間以上働く場合にも社会保険が加入できるようになりました。
 

就職活動する際に会社の条件やご自分の条件が合致しているかを確認することも、理想の職場を見つけるための重要な項目ではないでしょうか?

⑤薬剤師賠償保険に入れる職場を選ぼう

 

これも就業場所によりますが、パートでも正社員と同じように加入できる職場が多いので、できればそのような職場を選ぶことをおすすめします。
 

人間が行っていることですので、何がミスにつながるか分かりません。その点でも薬剤師賠償保険はとても大事な保険と言えます。

3.パートとして働くからこその悩みって何?

 

パート薬剤師は正社員と違ってさまざまなメリットがありますが、一方で悩みを抱えることも少なくありません。
 

パートならではの悩みには、どのようなものがあるのでしょうか?

①給与や保証について悩み

 

給与や保証については承知の上で入職していることもあり、これらに悩んでいるパート薬剤師は正直それほど多くはないです。
 

たとえボーナスがなくても、その代わりに時間をある程度自由に使えるということが利点ですので、正社員との差を理解して働いている方がほとんどと言っていいでしょう。
 

②業務においての悩み

正社員と同じ業務内容を行っているパート職員に関しては、業務におけるパートだからこその悩みはあまりないと思います。
 

パートという形であっても業務内容が同じなら、今持っている薬剤師のスキルで対応できますよね。
 

しかし先ほどご紹介しましたように、短期雇用などが理由で一日中同じ業務をこなさなければいけない場合には、かなりのストレスになることも多いです。
 

薬剤師業務はただでさえいつも同じことを繰り返しているような業務にもかかわらず、例えば錠剤の調剤のみを一日中やらなければいけないといった状況では、気を紛らわすこともできず疲労を倍増させてしまいかねません。
 

疲労が倍増するだけならまだ良いのですが、その疲労により普段しないようなミスを起こすこともあるので、いつも以上の注意が必要になります。

投薬業務なら気が紛れる?

 

一方で投薬を一日中こなさなければいけない場合、投薬業務は毎回違う患者様に対応しますので、調剤業務と違って気は紛れるかもしれません。
 

ただ、一日中薬の説明をしなければならないので声が枯れて出なくなってしまったり、風邪を引きやすくなってしまったりという不満の声も聞かれます。
 

一つのことを集中してやるのが苦でない方であれば良いのですが、一つのことだけに一日中集中しなければいけない状況は、実際に経験してみないと分からない辛さがあるということは、知っておいてもらいたいですね。
 

業務スケジュールを決める管理薬剤師がこの事実をを少しでも分かっていて、それを考慮してくれたら、働きやすい環境の提供と同時にミスの少ない質の良い調剤ができるのではないか、と思っています。

③残業においての悩み

 

先ほど「パートは時間で働いているので残業手当は基本的につく」とお話ししましたが、そうでないことも実際にはあります。
 

例えば、
 

「患者様が薬局内にまだたくさんいるのに自分だけ先に帰ることができなかった。他の薬剤師が誰も帰ってよいと言ってくれなったが、上司に頼まれた残業ではないので残業申請できない」
 

といったケースです。
 

残業手当は上司が残業を頼んだ時にのみ発生するものなので、このようなことがまったく起こらないとは言い切れません。
 

時間で働いていることがパートとしての利点なのに、「これでは何のためにパートという選択をしているのか分からない」といったことが悩みにつながっています。

④パートという立場においての悩み

 

業務においての悩みだけでなく、パートであることの立場での悩みを抱えている薬剤師もいます。
 

同じ業務内容を行っていても立場がパートだという理由で、自分の意見を訴えられない・訴えても所詮パートだからと言われてしまう悩みです。
 

たとえパートでも薬剤師として働いているからには、患者様に対しての責任は正社員と変わりません。
 

働いている中でシステム上や患者様への対応などに問題があった場合、それを上司に訴えることはごく普通のことのように感じる方は多いのではないでしょうか?
 

でも実際は「所詮パート」と言われてしまったり、パート薬剤師自身が勝手に「自分はパートだから」と思い込んで何も言えなかったりすることがよくあります。
 

パート薬剤師をしている方々は経験豊富な女性薬剤師が多く、彼女たちは患者様に対するマナーや職員同士でのあり方など、若い薬剤師が気が付かないことに気づくことが多いのです。
 

正社員・パートに関係なくお互いが意見を出し合い、医療の質を向上させることが必要だと言えますね。

パート薬剤師ならではの悩みを把握して面接時に確認を!

 

今回はパート薬剤師として働く上での悩みについてご紹介しました。
 

あくまでも例なので、このような悩みがない薬局あるいは他の悩みを抱える薬局もあると思います。
 

転職時に少しでも嫌な思いをしないようにするには、このような事例を覚えておいて面接時に確認することが大切です。
 

これは薬剤師である私が常に思っていることなのですが、
 

自分たちの立場を守ることや職場の質・業務の質を良くするためには、正社員もパート職員も恐れずに自分の意見をきちんと上司に伝えると同時に、それを受け入れる体制を整えることが必要なのではないでしょうか?
 

意見を言うことがあまり良いとされない日本社会では特に難しいとは思いますが、職員の悩みの改善が患者様に対する医療の質の向上につながることも確かなのです。
 

私たち薬剤師は、患者様の命に関わる仕事をしていることを常に忘れてはいけません。
 

この事実を改めて認識したうえで、パート薬剤師として働ける理想の職場を見つけてみてください。