他人と違うことをしているだけで、「誰もそんなことやってないよ」と注意されたり、周りと同じことをしていなかったがために、「みんなやってるのに」と言われたりした経験はないでしょうか?
 

日本では当たり前のように使われるフレーズですが、実は外国ではあまり耳にしません。
 

このストレス社会で自分を押し殺して生きなければならないからか、

日本は自殺者の多い国ランキング世界で18位・先進国の中ではなんとダントツの1位です。
 

心の病と呼ばれるうつ病を発症する人は年々増加していることもあり、最近精神科においての薬剤師の役割が注目されています。
 

今回は精神科の薬剤師の必要なスキル・やりがいなどについてお伝えしていきます。
 

1.精神科の薬剤師はどこで活躍できる?

 

精神科や心療内科の処方箋を取り扱うことが、精神科の薬剤師として役割を果たすための第一条件です。
 

具体的な勤務先としては、
 

  • 精神科や心療内科のある総合病院
  • 精神病院
  • 精神科や心療内科クリニックの門前にある調剤薬局
  • 在宅専門の調剤薬局


 

などが挙げられます。
 

精神科と一口に言っても活躍の場が幅広いことが分かりますね。

①総合病院や精神病院

 

精神科の患者様に服薬指導をする際は、患者様の病態や治療方針を押さえておくことが重要になります。
 

病院に勤務する場合、患者様のベッドサイドで服薬指導をしたりカルテを閲覧したりすることができますので、外来対応するよりも患者様の病態や症状をより知ることができますし、チーム医療の一員として治療に携わることにより治療内容の把握も可能です。
 

患者様や他のスタッフたちとのつながりが充実した中で薬剤師としての専門性を発揮できるという点は、病院で働く薬剤師だからこそのメリットではないでしょうか?
 

なお総合病院においては薬剤師により担当病棟がそれぞれ異なるため、精神科領域での活躍を望む場合は精神科または心療内科の担当薬剤師になることが必要です。
 

②精神科クリニックの門前にある調剤薬局

 

精神科や心療内科の門前薬局に勤務する薬剤師は、必然的に精神を患った患者様に対応する機会が多くなります。
 

病院薬剤師と違ってカルテの閲覧ができませんので、

処方薬と患者様からの聞き取りで症状などを判断しなければなりません。
 

「忙しい業務の中で、そんなことできるの?」と思った人も中にはいると思います。
 

確かにこれはコミュニケーション能力などを必要とする難しい業務ではありますが、ここが精神科薬剤師の腕の見せ所でもあるのです。
 

病院で受けたカウンセリングよりも、薬局で話を聞いてもらって心が軽くなりましたという患者様もいるほどで、調剤薬局での薬剤師の存在はとても大きいですよね。

③在宅専門の調剤薬局

 

在宅専門の調剤薬局の場合は、老人保健施設など高齢者の処方を取り扱うことが主になりますが、高齢者の中には認知症などの精神疾患を患っている人も少なくないです。
 

家族と離れて暮らしている人も多いことから、

さみしさなどを考えると心の負担が大きいことも想像できると思います。
 

施設によっては定期的に精神科医が訪問しているところもありますので、精神科の薬剤師としての役割を果たせる一つの場と言っていいかもしれません。

2.精神科薬剤師の役割とは?

 

患者様が薬を正確にかつ安全に服用できるようにするのが精神科薬剤師の一番の役割であり、薬剤師は医師への薬の提案と患者様の指導を主に行っています。

①医師への薬の提案

 

精神科は多種類の薬を処方するのが一般的ですし、向精神薬は相互作用や副作用が多いという特徴もありますので、これらの回避や緩和のために処方医へ薬の提案をすることも、患者様の安全につながる大切な役割です。
 

ここで緩和すべき副作用の例を挙げてみます。
 

向精神薬を服用している患者様によく見られる副作用の一つに「口喝」がありますよね。
 

命に関わる重大な副作用ではありませんが、ひどい症状になると、舌が上あごにくっついてしまって話すことも難しくなるケースもあり、患者様のQOL(Quality Of Life)を損ねかねません。
 

口の中が乾いてうまく話せないことを不快に感じ、少しでも口腔内を潤わせようと、ペットボトルのお茶が手放せないといった患者様もいるくらいですので、非常に苦痛であることが分かると思います。
 

患者様のQOLを向上させるためのアイデアを出し医師に伝えることも、精神科の薬剤師には求められているのです。

②患者様への指導

 

心を患っている患者様は適切な判断ができない場合も多々あり、患者様への指導も安全を守るうえで大切な要素です。
 

処方された薬を溜めておいて、それを一気に服用することで自殺を図ってしまったというニュースを耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか?
 

このような事件が起こさないためにも薬剤師の適切な指導が期待されています。

3.精神科薬剤師に必要なものとは?

 

精神科と他の科の大きな違いは、病状が検査結果には表れにくいという点です。
 

血糖値や血圧などに異常があれば数値に表されますが、心の病は数値では分かりません。
 

心の病の場合、同じ病状でもそれぞれ患者様に合わせた指導をすべき場面もありますので、薬剤師のさまざまなスキルが必須になります。
 

実際に精神科薬剤師に必要な6つのポイントをまとめてみました。

①相手の立場に立って考える力

 

心の病を患っている患者様の多くは人の気持ちにとても敏感で、相手が何を考えているのかを鋭く察知できる傾向があります。
 

対応する薬剤師がもしも患者様に対して「かわいそう」などと同情心を抱いたとしたら、患者様はその同情心さえもすぐに見抜けるということです。
 

患者様の中には自分がうつ病だと受け入れたくない人もいて、その人にもし「これはうつ病を治す薬です」などと薬剤師が説明してしまったとしたら、患者様の受けるショックの大きさは計り知れません
 

薬剤師のちょっとした態度や言葉が患者様を傷つけ、結果的に治療を中断させてしまう可能性も高いのです。
 

対応の際にはもしも自分が患者様の立場だったらと常に考えてみてくださいね。

②精神科の病態や患者様に関する知識

 

どんな科でも病態や患者様に関する知識は必須ですが、精神科の場合はより重要です。
 

例えば双極性のうつ病の患者様が急に明るくなったとき、

うつ病が改善してきたと思ったら実は躁病の症状だったということがよくあります。
 

一般的に顔色が良くなったり明るくなったりすると、それは元気になった証拠だからと安心してしまいそうになりますが、精神科の場合は明るくなったことと元気になったことをイコールで結べない場合も少なくありません。
 

それどころか、うつ病患者様が自殺を図るときは躁状態の時が多いのも事実ですので、元気になったように見えるときこそ服用を中止させないための指導が必要なのです。

③精神科薬に対する知識

 

先ほど紹介したように、向精神薬は副作用や他の薬との相互作用が多い薬でもあることから、多数の薬が処方されている処方箋を見ながら結果を予測する知識が求められます。
 

精神科の処方は他の科の処方に比べて解析することが難しいとされますが、本や勉強会を活用することによって少しずつ知識を増やしていくと良いのではないでしょうか?

④コミュニケーション能力

 

患者様の話を聞き出し、安全に服用できるよう指導するには薬剤師のコミュニケーション能力が非常に大切です。
 

精神科の患者様の中には対応のしづらい人も少なくありませんが、患者様との意思疎通が上手にできなければ治療をスムーズに進めることすら危うくなってきてしまいます。
 

病院でチーム医療の中で活躍している薬剤師にとっては、

医師や看護師など他の医療従事者との連携を図れるかどうかもポイントです。

⑤カウンセリング技術

 

カウンセリング技術も服薬指導時に必須のスキルになります。
 

薬局で少しでも患者様の心が軽くなってくれたら、薬剤師としてもすごく嬉しいですよね。
 

形式的な指導にとどまらず丁寧に接することが求められる一方で、カウンセリング時には注意すべき点があるということもおさえておいてほしいです。
 

患者様の身になって考えることはとても大切ですが、ただ単に親身になって話を聞くだけでは、患者様自身が薬剤師に特別な存在だと思われていると誤解しかねませんので、あくまでも専門家として話を聞くという姿勢が必要です。
 

お互いに嫌な思いをしないための配慮を心掛けていきたいですね。

⑥メンタルの強さ

 

精神科に勤務する医療従事者にはメンタルの強さが不可欠です。
 

精神科クリニックの医師は週に3日程度の勤務である場合が多いと思いますが、これは精神科にいると自分自身の心も病んでしまうという危険性があるからです。
 

心を病んでいる患者様だけでなく、精神科医自身が向精神薬を服用していることも珍しくありません。
 

精神科で働く場合には薬剤師自身もできるだけ強くなるべきで、メンタル作りの一環としておすすめしたいのは体を鍛えることです。
 

体と心を鍛えることは違うと思われがちですが、体の強さは心の強さに比例しますし、運動をして血液循環を良くすることにより気分転換も図れますよ。

4.精神科に勤務する薬剤師のやりがいとは?

 

この領域で薬剤師が大きなやりがいを感じるのは、患者様が元気に社会復帰できるようになった時ではないでしょうか?
 

「うつ病は心が風邪を引いた」と表現されることがありますが、風邪のように薬を飲んで寝ていれば治るものではないです。
 

薬物治療やカウンセリングを受けながら十分な時間をかけて治していくものですよね。
 

薬剤師はこの治療過程で、患者様の痛みを感じたり苦しみに触れたりするわけですから、患者様の元気になった姿を見ることができた時には涙が出るほど嬉しいに違いありません。

5.ステップアップするために目指す資格

 

精神科の薬剤師としてステップアップを考えている人は、精神科専門薬剤師や精神科薬物治療法認定薬剤師の資格取得を目指すという選択肢もあります。
 

資格の詳細については日本病院薬剤師会のホームページを確認してみてください。
 

6.精神科薬剤師のお給料

 

精神科薬剤師の年収は勤務先の薬剤師と変わらない場合がほとんどです。
 

ただ経験年数で収入がアップすることは十分考えられますし、専門薬剤師認定薬剤師の資格を取得することによって手当がつく可能性はあります。

7.精神科薬剤師になるための転職活動

 

精神科薬剤師への転職を考えている人は転職エージェントを利用するのも一つの手です。
 

精神科といっても医療機関ごとに特徴もありますし、勤務先が病院か調剤薬局かということでも業務に大きな違いがあります。
 

転職エージェントはそれぞれの勤務先の特徴などを把握していますし、分からないところがあれば直接問い合わせもしてくれますので、自分がどのように精神科薬剤師として活躍したいのかをまずエージェントに相談してみると良いかもしれません。
 

一般には公開されていない非公開求人を持っていることがほとんどなため、エージェントを活用することで条件に合った求人が見つかりやすいという利点もありますよ。

患者様一人一人に合った服薬指導を

 

今回は精神科に勤務する薬剤師について見てきました。
 

精神科の病気にかかる原因はさまざまですが、

過剰なストレスからうつ病を発症する人が後を絶ちません。
 

そのような患者様一人一人に対して個性を認め、みんなと同じでなくても大丈夫なんだということを、少なくとも薬剤師である私たちが訴え続けていくことが必要なのです。
 

「病は気から」と言われるように、心の病気は体の病気にも大きく影響を及ぼすため、心の病気を治すことはそのまま体の元気につながります。
 

精神科にかかる患者様は今後も増加することが予想されますので、この分野において活躍したいと考えている薬剤師の方は精神科で働くことを検討してみてはどうでしょうか?