新人薬剤師と聞いてまずイメージするのは新卒の薬剤師ではないでしょうか?
 

現在の薬学部は6年制で、生徒たちは病院実習や薬局実習を十分に行ってから卒業するようになりました。
 

大学を卒業して初めて社会に出るわけですから、人間関係などいろいろな壁にぶつかることも多く、就職後まもなく辞めたいと思ってしまう薬剤師も少なくありません。
 

社会に出て即戦力として働けるような時代にはなったのですが、 医療機関ごとに規則や文化が違うこともあり、就職しても一人前の薬剤師になるまでにはまだまだ苦労を強いられるというのが実際のところです。
 

今回は新人薬剤師たちが日頃からどんな悩みを抱え、どう乗り越えて成長していくのかについてご紹介していきます。
 

1.新人は新卒だけじゃない

 

新人薬剤師というのは新卒だけではなく、企業で働いていた薬剤師が病院や薬局に勤務することになれば、彼らも新人薬剤師ということになります。
 

薬学部がまだ4年制のころ、大学では薬の成分名を中心に学び、商品名は社会に出てから就職先において覚えるものとされてきましたので、薬の名前と成分名が一致するまでに薬剤師たちは大変な苦労をしてきました。
 

そのころ卒業した人が転職し、新人薬剤師として医療機関に勤務することになれば、一人前の薬剤師になるまでかなりの時間と努力が必要であることは言うまでもありません。
 

ただ彼らは社会人としての経験があるため、人間関係の悩みなどは新卒の薬剤師よりもスムーズに解決できる面はあります。

2.新人教育プログラムって何だろう?

 

病院や薬局によっては新人教育プログラムというものがあり、担当の先輩薬剤師が一日じゅう新人薬剤師について指導してくれます。
 

プログラムの内容は医療機関ごとに違いますが、例えば一週間ごとに「今週は錠剤の調剤指導、来週は散剤の調剤指導」というようにスケジュールが決められていて、薬局の仕事が一通りできるようになるまでだいたい1,2か月続くというのが一般的です。
 

この期間は医療機関で初めて仕事に携わるわけですから、慣れないせいか先輩に怒られることも多く、理不尽だと感じて、場合によっては辞めたいと思ってしまうこともあるかもしれません。
 

しかしそうであったとしても、少なくともこのプログラムが終わるまでは頑張って耐えてください。
 

プログラムを無事修了できたあかつきには、自分が薬剤師として成長していることに気づいて大きな達成感を感じることができますよ。
 

中には勤務初日に少し説明をするだけであとは放っておかれる職場もありますから、新人教育プログラムを用意してくれている職場に勤務できること自体が非常にラッキーなことなのです。

3.新人薬剤師のよくある悩み事と解決法とは?

 

新人薬剤師は具体的にどのような悩み事を抱えているのでしょうか?

①調剤ミスが多い

 

これは新人薬剤師なら誰もがもつ悩みです。
 

まだ調剤のコツもつかんでいない段階ですし、薬の棚の位置さえ分からないことも多く、あらゆるところに神経を張り詰めた結果ミスが起こりやすくなってしまいます。
 

初めは仕方がないのですが、薬剤師は患者様の命を預かる仕事ですので、簡単にミスが許されるようではいけませんよね。
 

「新人はミスが多い」ということをきちんと理解している医療機関では、通常1人の薬剤師が担当する監査を、新人の調剤したものに関しては2人の先輩薬剤師がダブル監査をして、ミスした薬を患者様に渡さないように工夫しています。
 

・落ち着いてできるだけたくさんの調剤をしてみよう

 

「今はいろいろ学んでいる最中だから間違えてもいい。その代わり新人教育プログラムが終わったら絶対にミスをするな」
 

という気持ちで先輩方は新人のミスをフォローしていますので、新人と呼ばれるうちにたくさんの調剤をこなして学んでいってほしいです。
 

ただあまりにもミスが多いと、先輩方も見落とす可能性がありますので、落ち着いて慎重に行うことがとても重要になってきます。
 

万が一監査でミスを見逃してしまった場合にはインシデントということになりますが、インシデントが起こってしまうと新人薬剤師だけでなくすべての薬剤師が後悔し、自分を責めることも珍しくありません。
 

ずっと落ち込んでいたがために、さらなるミスを引き起こしてしまっては元も子もありませんので、「二度と起こさないようにしよう」と気持ちを改めるのが大事だということも心にとめておいてくださいね。
 

②薬について勉強不足

 

大学ですべての医薬品について学ぶわけではありませんので、

薬剤師は勤務した医療機関で採用薬などを中心に学んでいくことになります。
 

新しい採用医薬品は常に増えていきますし、医薬品情報は毎日のようにアップデートされていくため、薬剤師は日々勉強することが必須の職業です。
 

長年薬剤師として勤務している人でさえ勉強が必要なのですから、新人薬剤師が勉強不足だと感じて悩むのはごく自然なことと言えます。

・おすすめの勉強方法とは?

 

この問題を解決するためにはやはり勉強をするしかないのですが、「どのように勉強をしていいのかわからない」という方もいるのではないでしょうか?
 

おすすめの勉強方法は、実際の患者様の処方箋を一日一枚選び、毎日それを解析していくことです。
 

これを処方解析と言いますが、処方されている薬を見てこの患者様にはどのような疾患があるのか・どんな副作用が現れる可能性があるのかということを予想してみてください。
 

最初は薬の効能も分からないことも多いと思いますので、治療薬辞典などで調べながらで構いません。
 

処方解析を重ねていくにつれて調べなくても分かるようになってきます。
 

これがスムーズにできるようになったら、「もしこの患者様に服薬指導するとしたら」ということを考えてシミュレーションしてみるのもとても勉強になりますよ。

勉強会も活用しよう!

 

薬局内で定期的に行う勉強会に参加するのも有効な手段の一つです。
 

新規の採用医薬品などがあると開かれるのが通常で、製薬会社のMRを招いて行われるため、その医薬品について詳しく知ることができるとても良い機会になります。
 

勉強会の後には質疑応答タイムがあり、新人薬剤師は先輩に遠慮して質問を控えてしまう人も見受けられますが、もし少しでも分からないところがあれば思い切って質問をしてみてください。
 

知識を定着させることにもつながりますし、質問内容を考えることも勉強の一つです。

③人間関係が辛い

 

職場の人間関係はどんな職場に行っても悩む問題です。
 

人間ですからもともと相性が合わないということもあると思いますし、先輩の足を引っ張ってしまって人間関係がうまくいかなくなってしまうこともあるかもしれません。
 

周りから「使えない新人」と思われることに対しての辛さと、戦力になりたくてもなれない歯がゆさが大きなストレスになってきますよね。
 

薬剤師の資格を持っていても新人ですから、仕事ができないことで薬局事務のイライラを増してしまい、事務との人間関係に悩む薬剤師もいます。

・挨拶を徹底し一人前になる努力が大事

 

挨拶は良好な人間関係を築くための基本なため、どんなにきつい態度をとられても職員に対しての挨拶は必ずしたほうが良いです。
 

相手も大人ですから、勤務中は叱っていても勤務以外では普通に接してくれる人も実際少なくありません。
 

一番大切なのは早く一人前になれるように努力をすることであり、その努力を陰で見ていてくれる先輩もきっといるはずです。
 

成長した結果戦力として働けるようになれば、

なにより周りの人の態度が大きく変わってきますよね。
 

一人前になれば自分の意見を言いやすくなりますし、周りもその意見に対して聞く耳を持ってくれるようになるので、より働きやすい環境が作れる可能性も高くなってきます。

④投薬するときに緊張して話せない

 

これは意外と多い悩みで、特に新卒の新人薬剤師によく見られます。
 

今まで学生として同年代とばかり接してきたのですから、社会に出ていきなり自分の両親と同じような世代の人たちや、それ以上の世代の人に薬剤師の立場で指導をするのは緊張して当然です。
 

服薬指導時に患者様からどんな質問をされるのか・その質問にきちんと答えられるのかという不安が付きまとうことも多いのではないでしょうか?
 

間違ってはいけないと思うからこそ余計に緊張してしまいます。

・場数を踏んで慣れていく

 

先輩薬剤師が患者様と楽しそうに雑談したり、質問に対して上手に答えたりしているのは、それだけ場数を踏んでいるからです。
 

最初は思うようにできないかもしれませんが、数をこなせばこなすほどスムーズに回答できるようになりますので、たとえ質問に答えられなかったとしてもあわてる必要は全くありません。
 

分からなければ薬局内の先輩に質問するかインターネットで調べるなどして、正確な答えを出したうえで改めて患者様に伝えることのほうがよっぽど大切です。
 

患者様の中には「若い薬剤師だから」と多めに見てくれる優しい人もたくさんいますので、恐れずに自ら進んでできるだけ多くの服薬指導をしてみてくださいね。

⑤体力的につらい

 

薬剤師の仕事は基本的に立ち仕事のため、今まで机で勉強をしていた人やデスクワークが主だった人にとっては、足がむくんでしまい体力的につらいと感じることがあります。
 

そんな環境でもだいたい1か月くらいすれば体力もついて立ち仕事が苦痛ではなくなってきますよ。
 

慣れるまではマッサージをしたり枕をふくらはぎのの下に置いて寝たりして、むくみをとる工夫をしてみるといいかもしれません。

4.辞めたいと思った時には

 

新人薬剤師の悩みと解決方法について見てきましたが、それでも辞めたいと思ってしまう場合もあると思います。
 

本当に辞めてしまっていいのか迷っている人のためにも、退職届を出す前に思い出してほしいことや注意すべき点についてまとめてみました。
 

①とにかく達成できると信じて頑張ってみる

 

続けていけば自信がつきますし、周りからの良い評価を感じるられるようになっていきます。
 

厳しかった先輩が「最近頼もしくなってきたね」などとほめてくれたら本当に嬉しいですし、続けてよかったと思うものです。
 

大学で猛勉強して国家試験を乗り越えてきたのですから、今は辛くても必ず達成できると信じてくださいね。

②目標を立てて頑張ってみる

 

仕事以外の楽しみを作ったり具体的な目標を持ったりすることで働くモチベーションを高めていくこともできます。
 

たとえ新人でも学生実習とは違ってお給料がもらえますので、留学や海外旅行に行くためのお金を貯めるために仕事を頑張っているという人や、ストレス発散のために習い事を始める人も少なくありません。
 

何か自分のための目標を作ることは仕事への向上心にもつながりますので、ぜひ試してほしいところです。

③どんなことなら耐えられるのかを明確にしてから転職を

 

続けるための努力はしたけれど、それでも耐えられないときは転職という選択肢がありますが、その際には自分の耐えられない部分と耐えられる部分を明確にしてから転職活動を進めていくことが必要です。
 

例えば勤務先に新人教育プログラムがなく薬剤師として成長できないままなのは嫌なので、厳しくてもきちんと教育してもらえるところで仕事をしたいというのであれば転職を考えたほうが良いと言えます。
 

新人プログラムがなく成長できないのが耐えられないけれど、厳しい教育をされるのも耐えられないというのであれば転職後も様々な問題で悩み続ける可能性が高いと言っても過言ではありません。
 

100%パーフェクトな職場はないに等しく、どこに勤務しても必ず何かしらの問題は発生すると思っていてください。
 

「次の転職先がどんな条件をクリアしていればそこで頑張り続けられるのか」ということを自分で把握してから転職活動を始めるのがポイントです。
 

④辞め癖がつかないように注意

 

転職するにあたって一つ気を付けてほしいことは、辞め癖をつけないようにすることです。
 

薬剤師は売り手市場と言われ、職場を選ばなければ就職先は常にあるので、

場合によっては嫌なことがあるたびに転職するということもできてしまいます。
 

これを繰り返すと辞め癖がついてしまい、問題を乗り越えていく力を身に付けるのが難しくなることは簡単に想像できるのではないでしょうか?
 

問題や困難を乗り越える力は人生においても必要な力ですので、辞めてばかりいるせいで成長のチャンスを逃すのはとてももったいないことですよね。

5.新人薬剤師の転職って難しいですか?

 

新人薬剤師の転職は経験のある薬剤師よりは難しいと言えますが、求人の中には「未経験可」や「教育制度あり」というものもあります。
 

まずは転職エージェントに相談をし、自分の希望を伝えて条件に合ったところを探してもらうところから始めるとスムーズに進めやすいです。
 

その際に前の職場のどんなところが耐えられなかったのかも詳しく話してみてください。
 

転職エージェントは転職のプロフェッショナルですので、勤めてきた職場での悩みや不満をヒントにして次の就職先を探してくれますよ。

失敗してもくじけないで

 

新人薬剤師は誰でも必ず悩みます。
 

勤務した職場に合わないと感じる場面や、社会に出る前に抱いていた理想と違い絶望することもあるかもしれません。
 

ただ新人の教育のために、周りの先輩方に負担がかかっているという事実も頭に入れておいてほしいと思います。
 

新人薬剤師の調剤が遅くても待っていてダブル監査をしたり、間違っている時に厳しく注意したりしてくれるのは、薬剤師として早く戦力になれるように願っているからです。
 

「石の上にも三年」というように、ほとんどの薬剤師は3年経つと本当に見違えるように成長しますので、くじけないで頑張ってくださいね。
 

一日も早く一人前の薬剤師として活躍できるよう祈っています。