「みんなと同じだということや平均的であるということ」
 

がなぜか評価される現代社会では、自分の個性や意見を抑え込まなければいけないことが多く、無理をして過剰なストレスを抱え込んでいる人たちがたくさんいます。
 

ストレス社会でうつ病と診断される患者様が増え続けているのは、それほど珍しくない現象と言えるのではないでしょうか?
 

うつ病と診断されると向精神薬が処方されますよね。
 

もちろん適切に使用すれば病気の治療ができますが、乱用すれば社会的な問題を引き起こしかねません。
 

向精神薬取扱責任者はこの乱用を防ぐために向精神薬の管理をする仕事をしています。
 

今回は向精神薬取扱責任者の仕事について詳しく見ていきます。
 

1.向精神薬取扱責任者とは

 

向精神薬取扱責任者は、向精神薬の
 

  • 輸入、輸出業者
  • 製造、販売業者
  • 取り扱いを行っている病院、薬局などの医療機関


 

などで薬の厳重な保管や管理をしています。
 

彼らの仕事の第一目的は薬物乱用を防ぐということです。
 

麻薬及び向精神薬取締法に違反する行為が行われないように、従業員の監督や処方箋チェックもしています。
 

2.向精神薬乱用って何が恐ろしいの?

 

向精神薬の乱用とは医療目的以外で薬を不正に使用することを言い、乱用を防がなければならない理由も押さえておくことが必要です。
 

①依存症の影響は脳だけではない!

 

向精神薬の多くは依存性がありますので、乱用をすることによって依存症になります。
 

依存症というと脳や精神の問題を思い浮かべる人が多いと思いますが、影響を与えるのは脳だけではないと知っているでしょうか?
 

心臓・腎臓のような臓器や視力などにも深刻な状態をもたらし、結果的に心と体の両方をむしばんでいきます。
 

「自分なんてどうなったっていいから」という人も中にはいるのですが、実は薬物依存は自分を傷つけるだけでは済みません。
 

薬物乱用によって精神が錯乱することにより、

周りの人にも危害を及ぼしたりすることもめずらしくないのです。

②ネットでの違法売買も

 

近年では向精神薬を不正に手に入れてインターネットで違法に売買することも問題になっています。
 

治療の目的以外で手に入れられた薬が自殺を多発させてしてしまったり、アルコールと一緒に他人に飲ませ、レイプドラッグとして使用されたりと、社会的な問題を引き起こす例も少なくありません。
 

向精神薬取扱責任者はこのような恐ろしい問題が起こらないようにするための管理を日々しているのです。

3.向精神薬取扱責任者の仕事

 

向精神薬取扱責任者の仕事内容は、業務の従事者が
 

  • 譲渡し
  • 譲受け
  • 保管
  • 廃棄
  • 記録


 

を適切に行っているか監督するのが主な仕事です。
 

分かりやすいように調剤薬局での「記録」を例に挙げてみます。
 

例えばフルニトラゼパムを卸業者から仕入れ、患者様の処方箋によって調剤をするとき、
 

専用のファイルに
 

  • 年月日
  • 品名
  • 相手の名前
  • 調剤または仕入れた数量
  • 残数
  • 薬剤師名
  •  

    などを記入したことのある人も多いのではないでしょうか?
     

    これは向精神薬を管理をするための記録の一つで、譲受けや譲渡し・残薬などを記録することによって間違った数で調剤するのを防ぎ、従事者が勝手に持ち出せないようにするためのものです。
     

    「メチルフェニデートのような第一種向精神薬」や「フルニトラゼパム・ペンタゾシンのような第二種向精神薬」についての記録が義務付けられていて、記録の日から二年間の保管が必要とされています。
     

    「トリアゾラムやブロチゾラムのような第三種向精神薬」は義務付けられてはいませんが、記録することが望ましいとされていることも押さえておいてください。
     

    薬局内の向精神薬の管理だけでなく、外部からの違法な行為を阻止することも向精神薬取扱責任者の役目です。
     

    近年パソコンなどで精密に偽の処方箋を作り、

    それを薬局に持ち込んで大量の向精神薬を入手するなどの事件も起こっています。
     

    処方箋に疑わしいところを発見した場合は処方医に問い合わせをするなど、偽造処方箋を見抜くスキルも求められているのです。

    4.向精神薬取扱責任者を申請できる人

     

    向精神薬取扱責任者になるための試験はありません。
     

    資格要件として、
     

  • 薬剤師その他向精神薬を取り扱うにつき必要な知識経験を有する者として政令で定める者(麻薬及び向精神薬取締法第50条の20第3項[1])
  •  
    麻薬及び向精神薬取締法第50条の20第3項[1]の政令で定める者は、以下のいずれかに該当する者とする。(麻薬及び向精神薬取締法施行令第6条[2]
     

  • 学校教育法に基づく大学(短期大学を除く)、旧大学令に基づく大学(以下「旧制大学」という。)又は旧専門学校令に基づく専門学校(以下「旧専門学校」という。)において薬学又は化学に関する専門の課程を修了した者
  •  

  • 学校教育法に基づく高等学校、旧中等学校令に基づく中等学校又はこれらと同等以上の学校において薬学又は化学に関する科目を修めて卒業した後、向精神薬を輸入し、輸出し、製造し、製剤し、小分けし、若しくは譲り渡し、又は向精神薬に化学的変化を加えて向精神薬以外のものにする業務(次において「向精神薬の輸入等の業務」という。)に4年以上従事した者
  •  

  • 向精神薬の輸入等の業務に7年以上従事した者
  •  

    引用元:ウィキペディア 向精神薬取扱責任者について

    の条件の一つに当てはまる人が申請できます。
     

    薬剤師であれば申請条件を満たしていることになりますね。
     

    薬剤師が申請をするときは通常、薬剤師免許証を証明書として使い、向精神薬の
     

    • 輸入業者
    • 輸出業者
    • 製造業者
    • 使用業者


     

    は厚生労働省大臣に申請をし、卸売業者や小売業者は都道府県知事へ申請をします。
     

    調剤薬局の場合、開設者は向精神薬卸売業者・向精神薬小売業者の免許を受けたものとして扱われますので、向精神薬取扱責任者の許可を期日以内に都道府県知事に申請しなくてはいけないということになります。
     

    薬局において向精神薬取扱責任者を変更するときは、責任者の変更施行日から30日以内に既定の様式で記載した変更届を届け出なければいけません。

    5.向精神取扱責任者の収入や就職

     

    向精神薬取扱責任者の平均年収のデータは500万から600万円と高めなのですが、この資格が影響しているための年収とは言い切れません。
     

    薬剤師免許があればだれでも申請できる資格で、通常は管理薬剤師などの地位や経験がある人がなることが多いため、このような高めの年収が計算されていると考えられます。
     

    向精神薬取扱責任者の資格は就職に有利というよりも、

    就職した職場で必要な場合に申請するという流れがほとんどなのが実際のところです。
     

    6.向精神取扱責任者に向いている人

     

    向精神薬取扱責任者は違法行為を防ぐ仕事ですから、とにかく正義感の強い人というのが向いていると言えます。
     

    今起こっている薬物乱用などの「社会問題に目を向けてその対策を考えられるかどうか」も求められる能力です。

    薬物乱用を防ぐことで人々を守る仕事

     

    今回は向精神薬取扱責任者について見てきました。
     

    向精神薬の乱用を防ぐとても重要な役割を果たしていますが、その一方で従事者を監督しなければならず、ときには患者様を疑うことも求められ、「仕事上でやりにくいこともあるのではないか」と思った人もいるのではないでしょうか?
     

    人を監視したり疑ったりする仕事というのは気持ちの良いものではありませんが、向精神薬取扱責任者の活躍が従事者や患者様を薬物の乱用から守ることにつながっているのです。
     

    この事実に誇りをもって仕事に当たってください。
     

    向精神薬の乱用に使われている薬の8割以上は、精神科からの処方によって入手されているというデータもあります。
     

    乱用を防ぐためにはうつ病患者様を減らすための社会の努力と、向精神薬取扱責任者の厳しい目が欠かせないのです。