調剤薬局に勤務したい場合、どのようにすれば一番スムーズに就職できるでしょうか?
 

現場では主に薬剤師と医療事務の2種類の職種の人が働いていますので、このどちらかの資格を取得することが薬局で働く近道と考えるのが一般的です。
 

実際に資格取得が就職につながる例は少なくありませんが、待遇の差が分からないと、どちらの資格を取るべきかなかなか決まらないですよね。
 

薬剤師と医療事務では仕事内容や給与が違うのはもちろんのこと、資格の取りやすさや転職のしやすさも大幅に違うと言っていいかもしれません。
 

今回はそんな医療事務と薬剤師の資格を選ぶのに迷っている人のために、仕事内容などの違いを見つつ選択する際のヒントを探っていきます。
 

1.医療事務の業務内容とは

 

医療事務の仕事は、
 

  • 患者様の受付業務
  • 処方箋の情報のコンピュータ入力
  • レセプト業務
  •  

    主にこの3つです。
     

    一般的な事務だけでなく「レセプト業務」というものがあり、これが医療事務特有の仕事になります。
     

    ①患者様の受付業務

     

    受付業務では処方箋を患者様から受け取りますが、受付は薬局の顔ですので、誰に対しても感じよく接するのはもちろん、
     

  • 保険証
  • お薬手帳の有無
  • ジェネリック医薬品の希望の有無
  •  

    の確認など調剤薬局ならではの仕事も同時に行います。
     

    確認事項が複数あるため、慣れないと混んでいる時には焦ってしまいますし、企業で受付業務の経験があっても最初は戸惑うことが少なくありません。
     

    確認作業の際、患者様によっては事務が確認した内容に対して質問をする人もいて、たとえば「なぜ保険証を提出しなくちゃいけないの?」「ジェネリック医薬品って何?」という質問がとても多いです。
     

    事務なので詳しいことはわかりませんと答えてしまっては患者様に不安を与えかねませんので、きちんと答えられるように準備しておくことも事務の大切な役割だということを覚えておいてくださいね。
     

    ②処方箋の情報のコンピュータ入力

     

    受付が終わると処方箋の情報をパソコンに入力し、この作業によって
     

  • 処方歴の記録
  • 会計の計算
  • 薬袋の作成
  •  

    ができますが、入力作業は非常に神経を使う作業です。
     

    一度入力ミスを起こしてしまうと、間違えた処方歴を記録してしまったり余計にお会計を請求してしまったりするだけでなく、薬袋の表示を間違えてしまう危険があります。
     

    たとえば1日1回飲むべき薬を1日3回で入力してしまった場合を考えてみてください。
     

    患者様がもし表示どおりに1日3回で服用してしまったら、1日で3倍の量を飲んでしまうことになり、非常に危険ですよね。
     

    医療事務が入力した内容は薬剤師も確認するものの、薬剤師が見逃してしまう可能性もありますので、最初から間違えないように慎重に行うに越した事はありません。
     

    薬を直接扱う薬剤はもちろん、同じ現場で働く医療事務もまた患者様の命に関わる仕事をしているのです。
     

    ③レセプト業務

     

    レセプト業務とは保険請求のことで通常月初めに行います。
     

    薬局が営業している時には受付業務や入力作業をしなければいけませんから、保険請求のために残業することも珍しくありません。
     

    この業務は請求の仕方など覚えることが多いですし、普段の仕事とは別にやらなければいけないことがあるのはやはり大変です。
     

    負担がかかると感じることもありますが、保険請求をするからこそ薬局は収入を得られると言っても過言ではありませんので、レセプト業務をそつなくこなせれば医療事務としてのやりがいを一番感じられますよ。
     

    2.医療事務の仕事を薬剤師の仕事と比較してみよう

     

    調剤薬局の薬剤師の仕事は、
     

  • 処方箋のチエック
  • 医師への問い合わせ
  • 調剤
  • 監査
  • 服薬指導
  • 薬歴の記載
  •  

    などが主な内容です。
     

    このラインナップを見ると、医療事務の仕事と比べて責任が重く、薬剤師の資格なしではできない専門的な仕事といった印象です。
     

    先ほど医療事務の入力ミスについてお話しましたが、薬剤師は調剤された薬だけでなく処方箋や入力内容についても最終的な監査をしますから、事務のミスであっても最終的には薬剤師が責任を取らなければなりません
     

    実際医療事務が責任を負わされるケースはほぼないため、「医療事務の方がいいかも」と思う人もいるかもしれませんね。
     

    たしかに責任の重さという面で見れば薬剤師はかなり大変な職業なのですが、薬剤師が医療事務の仕事をすることはできてもその逆は法律上禁止されていますので、薬剤師は責任が重いぶん地位や権利を持てる仕事なのです。
     

    3.資格は取りやすいですか?

     

    医療事務と薬剤師は同じ職場で働いているとはいえ、なるまでの過程に非常に大きな差があるというのが現実です。
     

    ここまでも仕事内容などの違いついてお話ししてきましたが、実際になるために必要な
     

    • 費用
    • 時間
    • 学力


     

    の3点から次に詳しく比較していきます。
     

    ①費用

     

    医療事務になるために必要な費用は、どのように試験対策するかによって違ってきます。
     

    医療事務試験を受けるのに特定の学校を卒業する必要はありませんので、独学を選択すれば、テキスト代を含めて約2万円程での取得も夢ではありません
     

    学校に通学して学ぶ人は10万円くらいかかりますが、通信講座の場合は約5万円で済みますよね。
     

    自分の仕事を持ちながら勉強することも可能ですので、経済的な負担はさほどないのがポイントです。

    ・薬剤師になるには莫大な費用がかかる!

     

    医療事務と違い薬剤師は6年性の薬学部を卒業することが必須となりますから、学費だけでも総額1200万円から1300万円かかりますし、実習費や交通費・高価な医学書を買い揃えることも必要になるため非常に高額な費用を用意しなければなりません。
     

    「バイトをしながら通おうかな」と思っている人もいるかもしれませんが、私が薬学生の時には勉強が忙しくとてもバイトをしている暇なんてありませんでした。
     

    実際バイトをしつつ勉強していた学生の中には、油断をして留年という結果になってしまった人もいましたので、そんなに甘くはない世界なんだと思い知らされたのを覚えています。
     

    バイトができない上に高額な学費を払わなければならず、そのうえもし薬学部への入学や国家試験対策のための予備校に通うとなったらさらなる費用が必要ですので、資格取得にかかる費用は比較できないほどの差があることを押さえておいてくださいね。
     

    ②時間

     

    医療事務を取得するためにかかる時間は3か月から半年と言われているのに対して、薬剤師は最低6年かかります。
     

    6年という期間はとても長く、薬剤師の資格を目指すのであれば、まず6年後卒業する年に自分が何歳になっているのかを一度イメージしみるといいかもしれません。
     

    私が薬科大に通っていたころはまだ4年制で、かかる時間は今に比べて短かったのですが、それでも4年という年月はとても長く感じました。
     

    それが今は以前の1.5倍の年月がかかるということですから、長い時間をかけて取得するほど自分にとって価値のあるものなのか、資格を未来にどう生かせるのか良く考えてみてください。
     

    先ほどご紹介したように、薬学部での勉強は仕事をしながらできるものではありませんので、6年間無収入でも大丈夫かという点も検討するうえで一つの目安になりますよ。
     

    ③勉強量

     

    薬剤師の場合は薬学部に入学する前にも受験勉強が必要で、勉強する内容も医療事務が実際に医療機関で使う実戦的なものを学ぶのに対し、薬剤師は微分積分や物理など薬局で直接使わない知識も学びます。
     

    私は特に入試科目の英語や入学してからの物理学の勉強にとても苦労しましたし、試験の時はそれらの科目で合格点を取るために、得意な数学や化学よりもとてつもなく長い時間をかけて勉強しました。
     

    現場で必要のないものまで学ばなければならないのは、一見すると非効率ですよね。
     

    たしかに実務に必須な内容だけ学べば仕事自体はできますが、薬剤師としての応用力を高めたり研究者としての発想力を磨くためには、はた目で不要と思われる知識がとても役に立つことが意外と多いのです。
     

    実際に働いていると、気づかない間にそれらの知識が役立っていることもありますし、「あのとき必要ないと思っていた教科を学んでおいて、本当によかった」と実感することも少なくありません。
     

    薬剤師免許を取るまでにはとにかく相当な勉強量を求めれられますので、薬剤師になりたいと考えている人は腰を据えて勉強する覚悟をしておいてください。
     

    4.医療事務と薬剤師の平均年収

     

    調剤薬局の薬剤師の平均収入が約550万円なのに対して医療事務は300万円~350万円です。
     
      
    年収に大きな差があり、医療事務から「うらやましい」「めぐまれている」という声も聞かれるのですが、薬剤師になるための勉強量や費した費用・時間・責任の重さなどを総合して考えると、単に数字だけで比べることはできません。
     
      
    薬剤師になるために高い学費を払うわけですし、長い時間苦労したのに年収が低かったらモチベーションも下がってしまいますよね。
     
      

    5.転職はしやすいですか?

     

    医療事務の資格は医療機関で働けるということや通信教育で取れることからとても人気が高く、資格取得者が沢山いるのですが、それに比べて医療機関側の求人の数はとても少ない現実があるため、医療事務の転職は正直難しいことが多いです。
     

    以前は人の手で行っていたレセプト業務も今は電子化されたことにより、正社員の需要が減ってきました。
     

    職場によっては医療事務を正社員で雇用せずアルバイトのみを募集しているところもあるくらいですし、せっかく資格を取ったのにそれが使えない状況はとても悲しいですよね。
     

    もちろん資格がないよりは就職しやすいものの、募集の少なさから就職するタイミングも選ばなければなりません
     

    厳しいようですが、転職を意識した場合は医療事務はあまりおすすめの資格とは言えないのが実際のところです。
     

    薬剤師は転職先に困らない!

     

    薬剤師は現在売り手市場で、雇用形態も正社員・パート・派遣のどれを選択しても比較的簡単に転職できます。
     

    現在薬学部を持つ大学が増えていますので、卒業生が多くなることを考えると今後売り手市場が続くかは分かりませんが、今のところはまだ薬剤師不足には変わりありません。
     

    良い条件で就職ができる可能性も高いので頑張って勉強した甲斐があったと思っている薬剤師も実際多いですし、人一倍の時間とお金をかけて勉強し薬剤師になれば転職にこの上なく有利な資格になりますよ。
     

    6.医療事務の中でよくある問題点

     

    新しい職員が入って来ればどの部署でも業務の引継ぎは当然行われるものですが、なぜかレセプト業務の場合は引継ぎを拒む人が多く、それが他の医療事務員の辞めたい原因の一つとなっています。
     

    理由として医療事務の就職がとても厳しい背景が挙げられ、保険請求のやり方を教える人が自分だけという状況は、自分の存在価値を上げることにつながることから、雇用続行の安心感になるのかもしれません。
     

    レセプト業務は今、ほとんどコンピューターで行うため1人で問題なく業務が進むため、たとえ引き継ぎがされていなくても薬剤師からあまり注目されず、注意される機会もないのがこの問題をさらに大きくしてしまっているのです。
     

    一人しか知らない業務があるということは、その人にもしものことがあったとき職場の人達が困るのは目に見えていますし、すべての職場で起こっているとは言いませんが、実際に発生している問題として覚えておいてくださいね。
     

    医療従事者として誇りを持って

     

    今回は医療事務と薬剤師の資格を比較してきました。
     

    これらは全く別の職種で仕事内容も違いますので、自分がやりたい業務がどちらなのかまず明確にすることが大切です。
     

    資格取得にかかる費用や時間も選ぶときの決め手になりますし、今の状況を合わせて考えてみてはどうでしょうか?
     

    どちらを選んでも、医療従事者として恥じない行動を心がけ、患者様のために働くという点は変わりません
     

    最初に医療機関に勤めたいと思ったほとんどの人が持つ志望動機は「患者様のために働きたい」ということですよね。
     

    医療事務にしても薬剤師にしても、医療に携わる者として誇りをもって働いている姿をイメージしながら資格取得に励んでください。