薬剤師が働く職場は調剤薬局やドラッグストアなどが一般的ですが、収入の安定面を考えて公務員の薬剤師になりたいと思う人もいるのではないでしょうか?
 

現在薬剤師が不足していることから、転職先に困ることはないものの、いつまでもこの状況が続くとは限りませんし、エスカレーター式にお給料が確実に上がる保障もありません。
 

ただの公務員ではなく薬剤師の資格や能力を生かせる公務員の仕事に就けるなら、仕事内容・やりがい・収入どれをとっても申し分ないですよね。
 

「どうしても調剤がしたい」といったこだわりがなければ、好条件の職場への転職も夢ではないです。
 

今回は実際に公務員になるための方法や公務員薬剤師の職種などを見ていきます。
 

1.公務員薬剤師の種類

 

公務員薬剤師として働く場合大きく分けて、国家公務員薬剤師・地方公務員薬剤師・麻薬取締官の3つの種類があります。
 

それぞれの公務員になるための方法と仕事の概要についてまとめてみました。
 

①国家公務員薬剤師の仕事

 

働く場所は厚生労働省など国の機関です。
 

仕事内容は医薬品の安全対策および、
 

  • 医療機器などの審査管理
  • 化学物質などの安全対策
  • 食品の安全確保


 

のほかに医療保険行政の企画立案など多岐にわたります。
 

保険薬局で働いている薬剤師は、国家公務員薬剤師の存在は知っていても具体的な仕事内容を知る機会はほとんどないため、業務内容の幅広さに驚いた人も多いかもしれませんね。
 

一般の薬剤師はあまり関わらない仕事をするのも国家公務員薬剤師のポイントです。
 

・国家公務員薬剤師になるには

 

国家公務員薬剤師として働きたい場合にはまず、国家公務員総合試験に合格することが必要です。
 

試験は非常に難しく、採用人数もごく少数のうえ薬剤師免許を持っていなくても受験できるため、倍率は非常に高くなると思っていてください。
 

難関を勝ち抜くのに公務員試験の専門学校に通って勉強している人も珍しくありません
 

公務員試験は大学で薬学を一生懸命学び、国家試験に合格した薬剤師でも一筋縄ではいかなさそうですよね。
 

試験は薬学や化学分野のみ出題の専門試験だけでなく、文系の知識も必要な教養試験や政策論文試験・面接もありますから、国の機関で働くには相当な覚悟と努力が必要と言えます。

・自衛隊を目指す人もいる

 

自衛隊は国家公務員の特別職ですので所属する薬剤師も国家公務員ということになりますが、薬剤師が自衛隊に勤務していることを知っている人は少ないかもしれません。
 

仕事内容は薬剤官として自衛官の健康管理や環境衛生を薬学的にサポートをしたり、自衛隊病院の薬剤師として調剤や服薬指導業務などに携わったりします。
 

自衛隊に所属をしていても、薬剤師には体力は必要ないと思う人もいるのではないでしょうか?
 

実は薬剤師として勤務しても自衛隊ですから、身長や体重・視力などの基準もクリアしなければいけませんし、体力的にも厳しい訓練を受けることも必須です。
 

難しい国家試験への合格するだけでなく入隊後に厳しい訓練も受けなければならないので、国の平和と安全を守る自衛隊に所属する人は、知識と体力を両方兼ね備えていなければいけないということも押さえておいてくださいね。

・刑務所で働く薬剤師をを目指す人もいる

 

「刑務所で働くということは、薬物中毒の人などに関わらなければいけない業務内容なのでは?」と想像する人もいると思います。
 

特別な場所なだけに業務内容も特別だと考えていた方には驚きかもしれませんが、業務内容は普通の調剤薬局で働く薬剤師と変わりません。
 

今までの調剤経験や知識を十分生かせる仕事であるものの、服薬指導に対応しなければいけない人が一般の患者様ではなく「受刑者」という部分はちょっと心配になりますよね。
 

暴言や暴力を受けたり、精神的に怖い思いをしたりすることを心配する声が多く、それが刑務所で働くのを躊躇させてしまうこともめずらしくないのですが、基本的刑務所で働いている薬剤師が受刑者と直接話すことはないと思っていてください。
 

医師の処方により調剤をするだけですし、服薬する人とコミュニケーションをとることはないため一般に心配されている要素はないですから、目の前にいる病気の人を少しでも健康にしたいという気持ちがあれば、刑務所での薬剤師業務はやりがいのある仕事です。
 

②地方公務員薬剤師の仕事

 

地方公務員の職種の例としては、国立病院(公立病院)・保健所・衛生研究所などです。
 

「国立病院の薬剤師は国家公務員ではないの?」と思っている人も多いかもしれませんが、国立の病院で働いていても地方公務員になります。
 

・地方公務員薬剤師になるには

 

地方公務員として働きたい場合は、ほとんどの場合地方公務員試験に合格することが必要です。
 

募集要項や試験内容は都道府県や市区町村によって異なりますが、
 

  • 教養試験
  • 専門試験
  • 論文試験
  • 面接
  • 適性試験


 

が行われるのが一般的で、国家公務員試験に比べると難易度は高くありませんが、公務員人気から倍率は高く、合格を目指して専門学校に通う人も大勢いますから、周りの人以上に努力ができる人でないと公務員になるのは簡単ではありません。
 

・国立病院や公立病院は公務員試験を受けなくてもいい!?

 

地方公務員になるためには公務員試験が必要とご紹介しましたが、国立・公立病院においては病院が実施する試験などで直接雇用を行い、公務員試験受験を必要としないところもあります。
 

地方公務員試験の勉強をするのには時間もかかりますし、専門学校に行くとなると費用もかかりますので、それが必要なく公務員になれる病院の職員はとても恵まれていると思う人もいるかもしれません。
 

たしかに公務員試験を受けずに済む点は有利である一方、国立・公立病院の倍率もとても高く、ほんの数名しか合格できないということは覚えておいてくださいね。
 

③麻薬取締官の仕事

 

麻薬取締官は麻薬Gメンとも呼ばれ違法の麻薬と取り締まる仕事をしています。
 

よくテレビで麻薬などを不正使用している人を張り込み、逮捕するドキュメンタリー番組がやっていますが、ここで活躍している人たちが麻薬取締官です。
 

テレビでは犯人確保のシーンなどを放送されていますので、危険と隣り合わせの仕事というイメージを持っている方も多いのではないでしょうか?
 

ドラッグの依存者を逮捕する時には武器の所持が必要なこともあるため、危険を伴う仕事であることに変わりはないものの、誇りをもって勤務している方もいますし、薬物汚染から国を守る仕事をしたい人には非常にやりがいのある仕事になりますよ。
 

・麻薬取締官になるには

 

麻薬取締官になるには厚生労働省が行っている採用試験に合格することが必要です。
 

この試験の受験資格は国家公務員試験の一般職試験の指定科目に合格するか、29歳以下の薬剤師または薬剤師国家試験の合格見込みの人でなければなりません。
 

麻薬取締官は薬についての専門知識が必要なことから薬剤師にとっては有利な条件ですよね。
 

実際にこの仕事をしているおよそ半数の人が薬剤師の資格を持っているというデータが出ていました。
 

毎回の採用者数は若干名なため難易度は非常に高いものの、薬剤師の能力を生かして日本を守ることができる仕事ですから、少しでも魅力を感じた方は麻薬取締官を目指してみてください。
 

2.地方公務員薬剤師の職種と仕事内容

 

ここまでは公務員薬剤師の種類を紹介してきましたが、具体的な地方公務員薬剤師の職種の仕事内容について次にお伝えしていきます。
 

①国立病院、公立病院

 

国立・公立病院の仕事内容は民間の病院の薬剤師と同様に調剤・監査・服薬指導になります。
 

運営は国や県であっても来院する患者様は民間と同じ一般の人ですので、公務員薬剤師だからといって仕事内容が特別ということはありません。
 

民間の病院から転職してしまうと経験を生かせないのではないかと心配する人もいると思いますが、今まで培った技術や知識を十分生かせますよ。
 

患者様のために調剤業務をし、正確かつ安全に薬を服用してもらえるように日々貢献しているのが国立・公立病院の薬剤師たちなのです。
 

②保健所

 

保健所の薬剤師の仕事は配属される場所によっても大きく違い、例としては
 

  • 薬事衛生
  • 環境衛生
  • 食品衛生
  •  

    などが挙げられ、食品メーカーや公衆浴場・クリーニング店などに対して検査や指導などが基本的に行われています。
     

    調査や検査をする仕事は医療機関での調剤・服薬指導の仕事とは全く違うことから、経験が生かせないことをデメリットとして考える人もいるのではないでしょうか?
     

    他の業務内容をすることに関して不安に思う人もいる一方、公務員の安定性や使命に魅力を感じる人も多いです。
     

    ただ配属される場所に関しては公務員試験を受ける時点では分かりませんので、希望と違う場所で働かなければいけない可能性があるということは知っておいてくださいね。
     

    ③衛生研究所

     

    衛生研究所は国民が健康で安全な生活を送ることができるように食品や水質・病原菌などの検査をするところで、具体的には食中毒の原因菌やウィルスを研究したり、新型インフルエンザの検査などをしたりしています。
     

    検査には薬や微生物についての専門的知識が必要になりますが、薬剤師は医薬品についてだけでなく化学や微生物なども学んでいるうえ実験にも慣れていますので、衛生研究所の仕事は薬剤師にとって持っているスキルを生かせる絶好の場になるかもしれません。
     

    安心して水や食品があるのはこのような研究所の検査があってこそですし、実験や研究が好きな人にはやりがいの感じられる仕事になりますよ。
     

    ⑤薬事情報センター

     

    薬事センターとは、医薬品情報の提供や質疑応答などを行っているいわゆるDI(Drug Information)室のことで、情報提供する対象となる人は薬剤師や医師などの医療従事者をはじめ、製薬会社の職員・一般の人たちと幅広くさまざまな質問に対応しています。
     

    「薬のことで分からないことがあれば、製薬会社に問い合わせすれば済むんじゃないの?」
     

    と感じる人も多いと思いますが、実は薬事情報センターは医薬品の情報だけではありません。
     

    薬の情報のほかに、
     

  • 保険や薬価
  • 副作用・毒性や相互作用
  • 文献や新聞
  • ご飲・誤用
  • ドーピング
  • 薬事法規
  •  

    などについての質問の対応もしており、薬事情報センターの活用状況として保険や薬価に関する質問が90%近くあるのに対し、医薬品に関しては1%に満たないというデータが出ていました。
     

    主に保険などの質問に対して対応している場所と言え、患者様のからの質問などで薬価や保険に疑問が生じた場合、どこに問い合わせをしたら良いのか迷ってしまう薬剤師もいるかもしれませんが、そういうときこそ薬事情報センターが役に立ちますよ。
     

    薬事情報センターの存在を知らなかった薬剤師の方も、先ほど挙げた情報について質問をしたい時はぜひ活用してみてください。
     

    ・質疑応答だけじゃない!

     

    薬事情報センターの仕事は質疑応答や情報提供だけにとどまらず、化学物質や社会保障制度の相談に乗ったり薬害防止に貢献したりもしています。
     

    地域住民の保険衛生を維持するための仕事を幅広く行っていることから、企業や病院のDI室とは異なる役割を果たしているのも、薬事情報センターで働く際に押さえておいてもらいたいポイントです。
     

    3.公務員薬剤師の給与はいくらくらい?

     

    国家公務員の初任給は、月給が手当を含めて約22万円・ボーナスが約80万円で年収はおよそ350万円ということになります。
     

    このデータを見ると調剤薬局やドラッグストアに勤務する薬剤師と比べると低めなイメージですから、民間で働いた方が得じゃないのかと思う人もいるのではないでしょうか?
     

    たしかに初任給を考えると民間に勤務する方がよさそうに見えますよね。
     

    実は公務員は働き始めはお給料が低くても、年々の昇給額は民間の会社よりも高い傾向がありますし、役職にもよりますが40代前半では750万円、後半になると約1000万円・50代になると1300万円というデータもありました。
     

    結果的に一般の薬剤師と比べるとかなり高い年収をもらえるのはもちろん、退職金などの待遇も良いですので、長期的な目線でお給料をたくさんもらいたい場合は公務員薬剤師を選ぶのも一つの手です。
     

    4.公務員薬剤師にはデメリットもある?

     

    公務員薬剤師は大きなやりがいに加え、お給料面や雇用の安定性などメリットがあるとをお伝えしてきましたが、デメリットがないのか気にある人もいると思います。
     

    実は転勤に関してデメリットがあると感じている公務員が多く、職種にもよりますが転勤が避けられないことが非常に多いです。
     

    職場が変われば引っ越しをしなければならない可能性もありますし、それによって子供の転校など生活スタイルも変えなければなりませんよね。
     

    地方公務員に関しては転勤しても県内など限られた範囲になる一方、国家公務員の転勤は全国にわたり、場合によっては海外転勤もありますので、1つのところでずっと働いていたい人には向かないかもしれません。
     

    公務員の仕事を探す際には薬剤師のスキルが生かせるがどうかだけでなく、転勤について調べ心構えをしておくことが大切です。
     

    やりがいと誇りを感じる仕事を目指して

     

    今回は公務員薬剤師について見てきました。
     

    公務員薬剤師の仕事があることを知っていても、その職種の多さに驚いた人もいるのではないでしょうか?
     

    職種が多いということは、それほどたくさんの分野で狭き門を突破した公務員の薬剤師たちが活躍しているということに他なりません
     

    公務員になろうと思ったきっかけが給与などの安定性からだったにせよ、多くの人が誇りをもって働いていますし、職種によっては命を懸けて勤務している人もいるのも事実です。
     

    公務員薬剤師になりたいと思っても、試験が難関なため挑戦自体をあきらめてしまう人も多いのですが、突破したからこそ感じられるやりがいもありますので、ぜひチャレンジしてみてくださいね。